ARMORED CORE X Spirit of Salvation−序説

※初めに
本作品は、アーマード・コアXを元にした二次創作作品です。
原作にはない設定、用語、単語が登場する他、筆者のフロム脳で独自解釈した世界観の見解が含まれます。


ARMORED CORE X
Spirit of Salvation

5.『最後の攻防戦(前篇)』

 ジュン・クロスフォードにとって、今回の事件は青天の霹靂だった。
 ざわめく周囲の喧騒の中、いつも飄々としている彼が、一人黙って冷静に物事を見つめていた。
 理由は、その事件を起こした人物の中に、知っている者がいたから。
“テレーゼ・マルファッフィよ”
 その者は別れ際、彼に名乗った。だが、彼には“彼女が嘘を言っている”と薄々感じていた。
 その者が持つ独特の空気が、本能的な“カン”に引っ掛かった。
 それは技術屋故の職業病的なモノか…。
 はたまた、自分自身のこれまでの経緯によるものか…。
「―ジュン。とりあえず、お前はタイプ0の整備へ戻ってくれ」
 リュークの声にジュンは我に返り、“分かった”と答えた。
 実際、リュークが話した内容はほとんど彼の頭の中には入っていなかった。
 ただ、聞かずともやることは明確だ。
 例の異教徒テロリストによる再度の襲撃に備え、戦う準備を万全にしておくこと。
 それが、ジュンが此処へ居る理由だ。
「奴らに何かしらの動きがあった時は、私の“タイプTR”とコンビで対処に当たる。レオナには、仮だがオペレーターをやってもらう」
 指示を飛ばすリュークの話を一通り聞き、彼はこれからの流れだけをもう一度確認して、元の持ち場に戻った。
 急造した仮設の整備ドックとはいえ、ACをある程度整備できる道具が揃い、また整備に専念できる環境は、技術屋として助かる。
 これまで多数の戦線に技術屋として出張してきたが、ここがこれまでで一番“まとも”だ。
 その環境の中、曰くつきの脚部が壊れたACが鎮座していた。
 『タイプ0』
周囲がそう呼ぶそのACは、左足を始めいくつか補修しなければならない個所が見つかった。
昼からの作業で、他の所も痛んだ装甲板を街までの道中回収したACの残骸から使える部品やソルジットの余剰パーツを使い、補修に充てる。直せるところは直し、取り替えるところは取り替える。その繰り返しだ。
昼よりもかなり修繕が進んだと改めて機体の前に立ち、ジュンは思う。
「ジュン。言われた通り、左脚部の避けた装甲板を溶接しておいたわ。それと膝関節のジョイントパーツもタイプTLの余剰パーツで交換しておいた」
 彼の隣へ整備服を着たレオナがピックアップした修理個所のリストをもって現れる。
「サンキュー。頃間から少し休んでいてくれ。残りは俺がやるから」
 彼女からリストを受け取り、目を通しながら再び整備用のキャットウォークへと昇る。
「ジュン、貴方も無理しないでね。此処へ来てから、ほとんど動きっぱなしだから」
 つけていた整備用グローブを取りながら、レオナは心配そうな顔でそう告げた。
 言われてみれば、確かにそうだ。広杉邸に到着して以降、この機体とリュークのタイプTRの整備でずっと動き回っている。
 “大丈夫だ。無理はしないよ”と答えて、ジュンはキャットウォークの上に置いてあった工具を手にし、作業へ入った。
 ため息をついて、レオナはその場を後にする。作業をしつつ、それを気配で感じ取りながら、ジュンは考えていた。
(この今回の一件は、単純に依頼だから、とかだけじゃないからな…)
 “追い続けている男”の影。それをこの街で起こっている出来事に感じていた。
(全てはあの男に探す為−)
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まろやか投稿小説 Ver1.50