へと進むことにした。
「空気も澄んでいるな…」
この空間では珍しく環境汚染が及んでいない。
痩せた地球という星にこういう場所が残っていたこと自体が奇跡に近い。
「ん…?」
やがて、眼前に大きな空間が現れた。
そこは、人工の空間だった。
ACの整備ドックであるのはすぐに分かった。
「あっ…」
眼前に広がる人工の台座。
天然の水路を利用し、造られた人工物。その中心に“それはあった”。
「アーマード・コアじゃないか…。しかも、中量二脚の高機動タイプ」
台座の上に鎮座する整備用ハンガーに固定され、待機モードで眠る巨大な鉄の兵士。
武装は右ハンガーにブレードと左ハンガーにガトリングガンのみだが、少なくとも現状では脱出には申し分はない。
「これなら、ここから脱出できるか−」
つい最近までここに人が立ち寄っていたかのように、周囲の整備機器は全自動で稼働していた。
それらを一見し、コクピットから垂れ下がる昇降フックにつかまり、作動させる。
昇った先、コクピットも予想以上に奇麗だった。
「コレは…?」
ACにはこれまでの経験上、幾度か搭乗経験がある。そして、そのコクピットも色々拝見してきた。
だが、この機体のコクピットには他の機体にはないものが備え付けられていた。
両手を差し込むような穴が左右に二つ。そして、跳ねあげ式の追加モニターが一つと、コクピットシートと一体化した何かのシステムモジュール。
「何なんだ?これ?」
イグニスは、一瞬搭乗をためらった。だが、拒否することはなかった。
なぜなら、自分が落ちた穴の方から化け物の鳴き声が聞こえたからだ。恐らく2匹の内、1匹がこちらに気づいて戻ってきたらしい。
「死にたくなければ…、やるしかない!」
意を決し、コクピットへ飛びこむ。そして、左右の穴へ両手を突っ込み、奥のグリップを握った。
刹那、モニターが待機モードから切り替わり、開いていたコクピットハッチが閉まり、エアロックが掛かった。
『新規被験者の搭乗を確認。これより生体データ登録を開始します』
追加モニターの表示と共に、その機体は高速で稼働モードへの復旧作業を行っていく。
ジェネレーターがフル稼働を始め、機体を固定していた拘束具のロックが外れ、モニターにカメラアイの映像が映る。
水路の奥、薄らと複数の赤瞳が見える。
“奴だ−”
心臓が一際大きく打つ。それとほぼ同時に、全身に一瞬微弱な電流が走った。
イグニスの脳裏に一瞬、見たことのない風景が映る。それはこの機体を製作した者の記憶だろうか、険しい顔でこの機体に“何か”を埋め込んでいた。
『登録が完了しました。“タイプ0(ゼロ)”、システム戦闘モードで機動します』
そのAC本来のCOMボイスが、そう告げた時、敵は眼前まで迫っていた。
「うわああぁぁぁぁぁぁ………!!」
それは恐怖からの叫びだったか、それとも勇ましい叫び声か…。イグニスは、両足を乗せていたペダルを強く踏み込んだ。
間髪いれず、機体は少し前かがみで構えて、背に眩い光を宿した−
グライドブースト。圧縮されたエネルギーが爆発的な推進力となって鋼の巨人を弾き飛ばす。
「わああぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァaaaa………−!!!」
激しい火花が散る。タイプ0は、自身と同じ背丈の巨大な機械ムカデと取っ組み合うようにぶつかり、ブースターの勢いのまま、水路を駆け抜けた−
一方、リュークは追いかけてくる巨大な機械ムカデを、手持ちの武器で動きを抑えながら、施設の外へと続く通路を駆けていた。
後ろから奇声を上げ、追いかけてくる
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