ACX二次創作小説第二話−序説

が強い地域だ。
それ故にいつもと違う光景がそこにあると異常に目立つ。無論、自分自身もそうだ。長居は不要だ。
予定通りの時刻、指定通りの場所で、彼は居た。背にバックをかついで、昨日と同じ格好でいる。
「おはよう」
 車を止め、ドアロックを解錠すると、イグニスは左手で乗車用のグリップを掴んで、助手席に乗り込んだ。そして、足元にかついでいたバックを置く。
「よく眠れたか?」
 周囲を確認し、リュークは車を発進させた。あくまでもスマートに、自然に。
「あぁ、ボチボチな…」
 やや惰眠を感じさせる感情のこもっていない声でイグニスは答え、目線を遠くへやるように助手席の窓に膝をついた。
「イグニス、お前この街を出るつもりか?」
 リュークの問いに、イグニスは一瞬表情を変え、反応し、答えず、そして、また固い表情に戻った。
「なぜだ?行く当てもないだろうに…」
「仕事以外で、この街にいる意味がない」
 淡々とした問答。あまりにもアッサリすぎ、端的な会話。
 リュークは、少々困っていた。予想以上に、人見知りなイグニスの性格に。
まぁ、“怖い”と思われている相手なら無理もないが−
「これから共に一仕事するのに、まだ私を信用できないのか?」
「…アンタからは、死神のようなモノが視える」
 “それが噂の千里眼か?”と言おうとして、リュークはそれを発するのをやめた。
「…そうなのかもしれないな」
 そして、小さく鼻で笑う。
「何だよ、皮肉を笑うか?」
 予想外の反応にイグニスは、呆れたような顔をした。
「いや、あながち間違いではないからな。私は、執事であり、この街を守る盾でもあり、それと同時に傭兵だ。私の手は、これまで様々な理由で多くの人を殺めているよ」
 リュークの言葉にイグニスはキツネに抓まれたような顔をし、
「アンタ、よく分からないよ。まったく、調子が狂うな…」
「私を視るならもう少し世界の事をよく知ってから、視てみるといい。そうすればその視えるモノの意味が分かる」
 軽いハンドルさばきで、郊外へ向かう環状道路へ入る。左右を流れる景色が次第に殺風景なモノへと変貌していく。
「何だよ、哲学なことを言うんだな」
 “そうだな”と答え、リュークは改めてハンドルを握り直した。
「見えてきたぞ、出口だ」
 街と郊外とを仕切る巨大な壁。AC部隊が攻めてきても、そう簡単には越せない様になっている防衛機能を持った鋼鉄の塀だ。
 いつ見ても威圧的な光景だ。一定間隔で配置されたオートキャノンやミサイルランチャー。バトルライフルやキャノンでも貫けぬ厚みと強度を持たせ、さらにその壁によじ登ろうとするならばACであろうと、その電子パーツを破壊する高圧電流が流れるようになっているという徹底ぶり。
「ここは収容所みたいだ…」
 同じくそれを見上げるイグニスが漏らした言葉通りだ。この街はこの塀によって、街は外の世界から隔離される。そして、中には一定の安定と秩序が齎され、何かがあれば自分を始めとする警備部隊が出る。
「“外”と区切るための塀だ。ここは、周りの勢力から見ればあらゆる条件面で優れている街だからな」
「ふ〜ん…」
 イグニスが相槌をついている間に、二人を乗せた車は、出入り口へと着いた。
 顔なじみの兵士二人が、“デートですか?”とリュークに冗談交じりに聞いてきたので、“そうさ。楽しい日帰りデートだ”と冗談交じりに答えた。
 相変わらず隣でイグニスはつまらなそうな顔でいる。彼がもう少し社交的ならば、印象が違うのだが…。
「お気をつけて。帰る場所はちゃんと守っておきますから」
 ゲートを開ける兵
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まろやか投稿小説 Ver1.50