ACX二次創作小説第二話−序説

※初めに
本作品は、アーマード・コアXを元にした二次創作作品です。
原作にはない設定、用語、単語が登場する他、筆者のフロム脳で独自解釈した世界観の見解が含まれます。

2.『とんでもない奴だ…』

 イグニスにとって、今日を“厄日”と認定させるには十分なことが起こりすぎた。
 長居し過ぎた一年間。
 周囲に名が知れて、噂の異教徒テロリストの一味が自分を捕まえようと追ってくる。
 ソイツらを、無慈悲に一瞬で叩きのめしたこの街の守護神にして最強の傭兵。
 そして、その化け物が、さらに自分へ言った。“依頼したいことがある”と−
 自宅への送迎の車の中。窓の外、すっかり日がくれた空を仰ぎながら、疲れきった顔でイグニスは回想していた。
 鼻の奥にかすかに残る火薬と生レバーのような臭いが先の凄惨な光景を思い出させる。
 勝負は一瞬だった。男二人は最初の攻撃で死亡。そして、パワードスーツを来た女は、辛うじて生きていて、歩が悪いと踏んだのか、一目散にその場から退散した。
「…どうした?気分でも悪いのか?」
 隣でハンドルを握るリュークの声でイグニスは回想から引き戻される。
「いや、なんかさ…。どうしてアンタみたいな化物がこの世にいるのかなって、考えていただけ」
「………」
 思いつく限りの皮肉を言ったつもりだったが、リュークは何の反応も示さない。むしろ黙って運転するが故に、“怖い”。
 無表情で、中性で、あまりに奇麗に整い過ぎた顔立ちが、何を考えているか分からないからだ。
「…お前の話は聞いている。その左手には、千里眼の力が宿っているんだろう?」
「−そうだよ。だからこうしてグローブしている。直接触れなければ余計なコトを見ずに済むしね」
 リュークの問いにイグニスは答えて、グローブをつけた左手を振ってみせる。
「一体どこまで見える?対象は物でも人でも関係ないのか?」
「制限はないよ。対象と関連するものがあれば、それを基点に特定の所まで見える。どこまで見えるかはその時じゃないと分からない」
 イグニスは、淡々と質問に答える。無駄に隠してもリュークには通用しないと考えたからだ。
「そうか…。ならば、先の話の続きをしよう」
 前方の信号が赤に変わり、車が止まる。イグニスが寝床にしている聖堂はもう少し先、通りより一つ入ったところだ。
別の信号が青になり、目の前の通りを左右へ人や車が往来を開始する。
「探してほしいのは、ある人物だ」
 そう告げて、リュークは上着の内ポケットから、一枚の紙を取り出す。
「ちょっと待った!俺はまだ依頼を受けるとは言っていない」
 それを制止するようにイグニスは声を荒げた。
「確かに先助けてもらったし、別にアンタが嫌いじゃない。だが−」
「“信用できない…”、か?」
 声を荒げるイグニスにリュークは表情一つ崩さず訊ねた。
「あぁ。俺はアンタが怖い」
 イグニスが答えると同時に、目の前の信号が変わり、リュークはスマートな動作で車を発進させる。
 マニュアルミッションの軍用車なのに、まるでオートマチックミッションのリムジンに乗っているかのようにとてもスムーズな発進だった。
「どうすれば信用してもらえる?」
「俺と一つ仕事をしてほしい。その結果で俺がアンタを信用するかどうか、依頼を受けるかどうか、決める」
 車が通りから一つ中へと入る。目の前に古典的なレンガの建物が見えてきた。聖堂である。
「分かった」
 ゆっくりと聖堂の入り口へ車を停車させ、リュークは室内灯をつけた。そして、先とは違うポケットから携帯電話を取り出す。
「このご時世に、珍しいものもっ
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まろやか投稿小説 Ver1.50