その頃-双子-

今日から夏休み。
今年から高校1年生になった私達は、日頃の感謝のつもりでお兄ちゃんの家に行き家事とかいろいろ(本当はイタズラするつもりだけど)やるつもりで電車に乗り町まで来たはいいけど、何故か真っ暗だった。
様子がおかしい。町の雰囲気が違う。人の気配がしない。
「春、離れちゃ駄目だよ?・・・危ない気がする。」
突然だが私は霊感がある。
普通の人には見えないものも私にははっきりとわかる。
「秋、待って!早いよ!」
姉の春奈は私ほどではないが、ぼんやりと解るらしい。
ただ、姉はモノに触れてるときモノの思念を読み取ることが出来る。
しかし、兄はこの手の類いの能力はないのかたまに霊が近くにいても気づかないのだからある意味残念だと思う。
まぁ、こんなの見えない方がいいと思うけど。
さっきから気味が悪いのだ。
誰かに見られてる気がして・・・。
「秋!前に何かいる!」
知らず顔が下を向いていて気がつかなかった。
顔を上げるとそこには
「お、鬼?!」
まるで童話にでも出てくるかのような鬼。
ただ童話のような可愛らしさはなく、角は禍々しく曲がっており、爪は鋭利に伸び、口から牙みたいな歯が見え隠れしている半透明体なため色は蒼白く目は無数にあった。それも身体中に。
『フ・・タ・ゴ。ニ・・エ・・・。』
何かを呟いているが上手く聞こえなかった
春の手をとって駆ける。
「春、走るよ!」
「秋?!」
死んでしまうかもしれない、殺されてしまうかもしれない。
それは嫌だった。
今までなんで気付かなかったのだろう。
周りは鬼だらけじゃないか。街灯が点々と点いてるのを頼りに走る。
ずいぶん走った。ここまで来れば大丈夫だろう。
「秋・・・、早いよ。」
春は息切れしている。休んだ方が良いかもしれない。
「んじゃ、あそこの木のとこで休もう?」
春はコクリと頷くと木の側に座った。
「ねぇ、秋。あれって・・・。」
春が服の袖を掴み聞いてきた。
私も春の側に座り込んだ。
「鬼・・・だったのかな?」
とても気持ちが悪かった。無数の目に見つめられ、蛇が蛙を睨んだような状態にもしなったら・・・。その先は考えたくない。
地面の一点を見つめ思い詰めていたら、首筋に冷たい感触がきた。
「ひゃあぁっ!?」
隣を見ると春が驚いた顔をしてペットボトルの水を2本持っていた。
「はぁ・・・春か。脅かさないでよぉ。」
春は申し訳なさそうにしながらペットボトルを差し出してきた。
「秋、ごめんね?喉乾いたから、一緒飲も?」
「ありがと。飲もっか。」
一息ついたとこで、春はバッグから黒い筒状のモノを渡してきた。
「これ・・・。」
懐中電灯だった。
「ナイス!春。」
早速つけた。明かりはまだ大丈夫そうだ。
ふと、後ろに明かりを向けた。そこには、そびえ立つ廃墟ビルがあった。
「ここって・・・?」
もしかしたら碧崎さんとか言う人のビルかもしれない。
上の方に一ヶ所だけ明かりが点いている。
「秋・・・。」
春は様子をうかがっている。
「行ってみよう、春。」
春の手を握る。春も強く握り返して秋に告げた。
「ずっと、一緒いてね?」
「当たり前だよ、春。私達はずっと一緒。これまでも、これからも。」
春が安心したのが見なくてもわかった。
本当、不思議な気持ちになる。
春にはいつもこうして助けてもらっている。
肩の力みが和らいだ。

こうして私達は廃墟ビルに入った。
エレベーターを使おうとしたが動かなかった。エントランスフロアがこんなに広いとは思わなかった。
上に行ける階段を見つけた、その時だった。
鬼が入ってきたのだ。見える数で4、5体。身
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まろやか投稿小説 Ver1.50