Sterted-明けない夜-

ここで僕なりに整理したいと思う。
僕は当たり前だが、榊原直夜。
今ソファーで寝転がっているのは魁。偶然、殺人現場に居合わせた女性。
で、さっきから僕の側にいて離れない白いワンピースの少女の名前は・・・。
「君、名前は何て言うの?」
少女は顔を向けて僕に告げた。
「澪。」
澪(みお)はそのまま話続ける。
「もう始まっている。明けない夜が、永遠の闇が。」
何を言ってるか解らなかった。
さらに澪は続ける。
「双つの命、重なりし時、闇が解き放たれよう。夜を直せし者、双鬼を引き離すべし。さすれば夜は明け災厄は止まるだろう。」
「澪ちゃん?一体何を?」
ちんぷんかんぷんだった。
澪は少し怒った感じに話す。
「知らないでは済まされない。もうすでに始まっている。明けない夜が、永遠の闇が。」
ふと、時計の針を見る。
「止まってる・・・。」
さっきから進んでない気はしていたが、何故か時計の針は2時を差したまま動いていない。
急いで窓を開ける。
「・・・嘘だろ?」
思わず息を飲んだ。
外はあり得ないほど静かで深い闇に覆われていた。
服の袖を引っ張られた。
「・・・っ!」
澪だった。頭を下げてるので表情は伺えない。
「忌み嫌われる双鬼。逃げろ、村に向かえ。」
何がなんだか解らない。
「村・・・って?」
「地図から消えた村・・・、神無村」
魁だった。
今まで黙っていた魁がソファーから立ち上がっていた。
「魁、知ってるのか?」
神無(かみな)村、聞いたことはなかった。
魁は俯いたまま告げた。
「私が、その村の巫女だから。」
魁が?まさか、そんなはずは・・・。
「もう一人いるの。双子の弟が・・・。嵬って言うの。」
弟?性別が違えば巫女にはなれないのでは?
「直夜が考えてる通り巫女にはなれないわ。」
自分の考えが見透かされ少し狼狽した。
「それでも神無村では双子は忌み嫌われるもの。そこで嵬は私を逃がそうとした。」


乱れる息。足場が悪く何度も倒れそうになるが、嵬に手を引かれてるためなんとか走っていた。
「魁、早く!」
生い茂る草木。頬を伝う汗、頬を撫でる生暖かい風。自分達を覆い飲み込んでしまうかのような深い森。
「待って!嵬!」
13歳になる前日の夜だった。そう、明日は俺たちが死ぬ日。
双子であるが故に忌み嫌われる存在。
神無家から産まれた神無(かみな)魁と嵬。
この村の統治者から双子が出てしまった。
それはもっともイケナイコト。

lt;双鬼生まれし時、13の歳に贄として百目鬼に捧げよ。さすれば、百目鬼はその双鬼を・・・し、その村を・・・だろう。
gt;
じいさんがよく見ていた書物に書いてあったがとても古いもので字が見えなかった。
「くそっ、何とかしないと。」
せめて、魁だけは助けたい。
「あった!抜け道だ。」
すぐ近くから村人の声がする。もう時間がない。
「魁、お前だけでも逃げろ!橋を越えれば追ってはこれないから。」
魁に懐中電灯とパン、水筒そして手紙を渡す。
「ねぇ、嵬は?嵬はどうするの?」
俺は覚悟を決めた。
「俺も後から追う。大丈夫だって俺は村で1番足が速いだろ?すぐに追い付くさ!」
笑って、魁に告げた。安心して欲しくて、いつも気弱でドジな姉だったが、忌み嫌われ虐められてた時は守ってくれた。優しく、芯の強い姉への俺が出来る最大の恩返し。
「本当?すぐに来てね?」
姉は今にも泣きそうだが我慢しているのは見てとれた。
「んじゃ、これはお姉ちゃんから嵬へ御護り代わりね。」
百目鬼家の家紋がついた印籠だった。いつも薬や絆創膏を入れている。姉が死んだ母さんからもらった大切なも
[3]次へ
[7]TOP [9]目次

まろやか投稿小説 Ver1.50