第二羽 過去-1年半戦争-

真っ暗な夜空だった。
月は煌々と輝きその光さえ飲み込んでしまうよう夜の深さ。
そこに、飲み込まれるように大量のレイヴン達が一斉に投下された。
その闇に紛れるためのような黒いカラーリングが企業の色だ。企業に所属する専属のパイロット達は皆ACをこのカラーリングにする。
その様はまるで軍隊だ。いや、企業と言う名の軍なのだ。
レイヴンは個々のカラーリングにするため区別するための意味もあるのだろうが。
「第一ポイントに着いた。オルガ、指示を。」
「意外に早かったですね。そこから東の方面にピラミッド型のビルが見える筈です。そこに向かうべく地上を移動します。道は一本ですので迅速に行動してください。」
指示を聞き、俺を含めた仲間と共に東を目指した。
道なりに進んでいくと開けた場所に出た。
障害物がなくここで狙われたら危険な場所だと判断できる。
・・・、やはり簡単には通してくれないらしい。
「ちっ、囲まれたのか!?」
「全員に告げます。突破しなさい。」
「突破!?正気かオルガ?」
敵はざっと見積もって20機ってところだった。
「4倍、あるいはそれ以上。」
「なにか問題でも?」
「やってやるよ!全員、ここを突破する!俺に続け!」
ブーストを一気に加速させる。
それでも中央までしか進めない。
「・・・。なら、倒すまでだ!」
目の前に立ちはだかる敵をブレードでコアを一刀両断にする。
敵は崩れるように倒れ爆破した。
仲間はすでにそれぞれ戦闘を始めていた。
必死の戦いの始まりだった。

『フィンレイ様!!敵襲です!』
勢いよく扉が開かれ読んでいた書物から視線が扉へ向かう。
「何?」
深夜になった頃の話だった。
「企業から攻めてくるなど・・・。よほど、邪魔されたくないらしいな。」
書物を閉じ静かに目を閉じ腕をくみ背もたれにもたれ掛かった。
『企業の連中は第1投下に6ポイントから攻めてくる模様。中央にて合流し、N.O.R.本部に攻め込むつもりでしょう。』
「第1投下だけでは終わるまい。第2、第3の波状投下で攻め込むだろな・・・。俺も出る。ACを準備しろ。」
『はっ!』
深い闇の中に遠く赤く燃え立つ拠点を窓越しに見た。
「行くか・・・。」
男は席を立ち、壁に掛けてあるロングコートを羽織り、部屋を後にした。

向かってくる敵に機体を後ろに引きながらレーザーライフルを浴びせる。
敵は右腕を持っていかれた挙げ句、爆破しその衝撃で何機か誘爆した。
数は大分減った。仲間も全員生き残っている。これなら勝てる。もう少し行けば拠点がある。そこで補給すればいい。
だが、そんな考えは仲間が撃破されたことによって吹き飛んだ。
機体の右側を蒼白い軌道が通ったかと思うと仲間の機体のコアを貫通し爆発した。
「脆いものだな・・・。」
敵が撃ってきた方向の1番奥の通路にいる敵に銃口を向けて言う。
「誰だ!?」
「俺か?俺はフィンレイ。氷龍のフィンレイ。」
「氷・・龍・・・だと?」
敵は一気にブーストとを加速させたかと思うと、残りの仲間3機をブレードで真っ二つにした。反撃する暇もなく3機は崩れ去った。
「やるじゃねーか。」
額を伝う汗。
「お前は他のやつらとは違うのか?」
互いに突きつけ合う銃口。
「だったらどうなんだ?!」
走る戦慄。
同時に放たれた銃弾を紙一重に避ける。
互いに距離をとり向かい合う。
「なら、排除せねばなるまい!」
「上等だぁーーー!」

交じり合う斬撃。
それが交わす挨拶のように。

12/09/02 13:46更新 / N-BYk

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