ある男の話をしよう
彼は正義の味方に憧れていた。
だがそれとは逆に男は正義とは逆の世界へと足を踏み入れた。
何故ならば正義とは多くを救う為に少数を犠牲にするという事だったからだ。
それを知った時男は絶望した、「どうしてこんな事が簡単に出来る」
男は悟った、全ての悪を消し去る為に自分もその道を歩むと。
そして男はなった、正義の味方へと。そして男はその術に長けていった。
殺しの方法を。
そして次第に志を共にするものが増え始め、大きな軍が出来た。
ある者は元殺人狂・ある者は狙撃の名手・ある者は武器のスペシャリスト
多くを救うために少数を殺す事に長けてきた連中が集まる組織。
それがポーカーフェイス大佐率いる傭兵集団
AC特務師団MOME大隊なのだから。
フェンリル大尉に執務室に連れてこられたアナザーは今正にその男と対峙していた。フェンリルはアナザーの手錠を外すと
「では、失礼します」
と言い、部屋を去ってしまった。
ポーカーフェイスはこちらを見ないで何事も無かったかのように書類に目を通していた。時計の音だけが鳴り響く沈黙、アナザーにはそれが何時間にも感じた。沈黙という名のプレッシャーをアナザーは感じていた、空気が重いとはこの事だ。
アナザーは思った、ここで何かを発しなければ始まらないと。
息を飲み勇気を振り絞って何か言わなければ!
「お・・俺は唯の一般市民だ!・・・・・」
沈黙が続く・・・
・・・・・
ポーカーフェイスからの返事は無く書類に目を通している。
意図が通じないのか聞こえていないのか?はたまた無視しているのかアナザーには解らなかった。
「話を聞けよ!」
アナザーは担架を切った口調で言ってみた。
するとポーカーフェイスは目を通していた書類を机に置くと立ち上がり、アナザーの方へと向かう。
身長はさほど大差は無かったのだがポーカーフェイスから滲み出る気迫で何倍にも大きく見えた。
するとポーカーフェイスはアナザーの両肩を掴むと近くに有ったソファーへと突き倒した。
「・・・まあ座れ・・・話はそれからだ・・・・」
アナザーは一瞬殴られるかと思い身構えていたが、予想は外れたようだ。
前歯の1本くらいは覚悟していたのだが、結果的に助かった。
「では聞くが・・一般市民が何故あのような施設にいるんだ?・・見たところあそこの関係者ではなさそうだが?」
懐にいれていたタバコに火をつけ、ポーカーフェイスはアナザーに聞く。
良いタバコを吸っているのか、煙からでもハーブの香りがしてくる。
「良いタバコ持ってるんだな。金持ちのあんたには解らないだろ。一般人の考えてる事なんて」
アナザーはタバコの事をネタにして皮肉で返した。
「何故そう思った?、俺が良いタバコを吸っているからか?」
「そうだよ・・」
ポーカーフェイスはアナザーの皮肉にも余裕を持って返す。
「・・・・・俺には最愛の人が居る・・・守りたい者も大勢居る・・故に周囲の健康管理も俺の仕事でな。これはタバコで有ってタバコでは無い。ただハーブを乾燥させて燃やしている、これは自作だ・・・・」
アナザーは驚いた。戦闘集団の上官がここまで周りの配慮に敏感なのかと。
そこまで信頼における組織という事なのか。
「そうかよ。で、あんたはお山の大将気取って部下に命令して戦地に送ってるんだろ?」
ポーカーフェイスはタバコの火を灰皿で揉み消す。
「お前は軍人が嫌いか?憎いか?」
アナザーはその言葉に怒りを覚えた、そして叫んだ
「ああ嫌いだ!戦争は家族や友達を殺した!
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