廊下に出た各クラスの新入生達。
中学では上級生だった彼等も、高校では下級生である。
実質、小中高と三回目の入学式になる訳だが、それでもなかなか慣れるものではない。
自重気味に小声でざわめき戸惑いながら、うろ覚えの順番で廊下に並び出す。
教室から出た明彦は、隣のクラス___A組に目をやる。
そこには相川みすずと他数名の女子に弄られながらジタバタしてる由佳の姿があった。
「心配する必要、あるワケねーな」
明彦が小さく呟く。
「・・・どうかした?」
「うんにゃ、何でもねー。ほれ、並んだ並んだ」
そっけなく自分の並び位置へと歩いていく明彦。
弘樹はついさっきまで彼が見ていた方向へ目を向けると、どういう事なのかすぐに理解した。
「・・・・・」
もみくちゃに弄られてはいるが、元気そうな由佳の姿を見て『なるほど』と心の中で思った。
周囲のヒソヒソ声が徐々に大きくなり、生活指導の葵烈火が生徒達をたしなめる。
「アンタ達ー、しーずーかーに。中坊のガキンチョじゃないのよ」
「先生、俺ら少し前までチューボーだったんすけど」
「お だ ま り。この背中の4文字が見えないのかしら?」
・・・生徒達は思った。何で縦に書いてあるんだろう、と。
他の生徒がお喋りする中、あかりは素直に口を閉じていた。
隣の女子達も彼女にならってか、それとも何をどうしたら良いものかと悩んで動けないだけなのか、B組の女子は静かであった。
もとい、A組の女子が騒がしかっただけかもしれない。
「べーろべろべーっだ」
隣のクラスの列に並んでいる由佳が、明彦のほうに向かってあっかんべーをしている。
そして兄である明彦も・・・「おしりぺんぺん♪」と兄妹揃って非常に低レベルな争いをしていた。
ガシッ
「恥ずかしいからやめなさい」
「あいだだだだだっ、み、耳引っ張るな!」
あかりが明彦の耳たぶを思い切りつねりあげた。まるで『お母さん』である。
それを見た由佳はざまーみろと小悪魔な笑みを浮かべ、今度は弘樹に向かって小さく叫んだ。
「おーい、ひろぽーん。後でそっちに遊びに行くからねー」
手を大きく振る由佳に、弘樹は無言で小さく手を振って返した。
「はーい、戦闘員シ○ッカーのみなさん整列。返事は イーーッ 以外認めないわよー」
「先生、ボケでおしゃべりを拡大させないでください」
「穂之村さん、良いツッコミよ。ボケかます先生としては嬉しい限りだわ」
「私は全然嬉しくありませんっ」
あかりの言葉を聞いているのかいないのか、烈火は胸ポケットからホイッスルを取り出し口に咥えた。
ピッ
笛の音が廊下に響き渡り、全員の視線が烈火のもとに集中する。
「大野先生、そろそろお願いしまーす」
彼女の合図により、A組の列が前進を始める。
「それじゃみんな、先生にちゃんと付いて来てね。迷子になっちゃダメよー」
「・・・どうやって迷子になるんだろう」
弘樹がぽそりと呟いた。
そしてB組が前進を始める。
・
・
・
その後に、
1年C組のクラスが後を追う形で進むはずだったのだが___
「お前達、自分の番号すら分らんのか? よくもこの学校の敷居が踏めたものだな。程度の低さに呆れて言葉も出ない」
30代半ばぐらいか、肌が浅黒くサングラスをかけた男の声だけが廊下に響き渡る。
まるでハリウッド映画に出てきそうな俳優のような面構えとドスの聞いた低い声。ヤクザ顔負けの迫力があった。
「もういい、並ぶ気すら無いならさっさと帰れ。自分の身の振り方が分る者だけついて来い。いいか、拾ってやろうなどと思うな。俺の
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