ロッカーの中身は?

「随分と隣が騒がしいようですけど・・・烈火先生大丈夫ですかねぇ」
スーツ姿に身を包み、出席簿を持った若い男が一人。
1年A組の扉の前で立ち止まり、隣で今回初の教鞭を取っている葵烈火を心配していた。
(かくいう僕も、二回も生徒の名前を書き間違えているからあまり褒められたものじゃあないけれど・・・)
ネクタイを締めなおし、呼吸を整え、A組の担任 大野順一は担当の教室へと入っていった。

ガラララララ

「あ、やべ、先生来た」
「オレの席何処だっけ」
「えーっ、まだこの子触りたいのに〜」
「ってゆーか、由佳の席どこーー!?」

教師大野がドアを開けるなり、ワイワイガヤガヤと群がっていた生徒が蜘蛛の子を散らすように席に戻っていった。

大野は手をパンパンと二回叩き、生徒達に促す。
「はい、みなさん。チャイムはなりましたよ。席についてください」


「あわわわ、由佳の席ってどこなのー!?」
一人残されて慌てふためく由佳。教室に入ってから延々と女子生徒から弄られていたための自分の席を確認する暇などなかったのである。
見かねた女子生徒の一人が「こっちこっち」と手招きをし、由佳は大急ぎで着席した。

「って、この席違っ」
机には自分ではない誰かの名前が書いてある札が置いてあった。

「構いませんよ。とりあえず空いている席に座ってもらって結構ですからね。」
教師大野はにっこり微笑み、そのまま教壇へとあがっていった。

手招きしてくれた女子生徒は・・・さっきまで由佳に抱きついていた物好きな女子だった。
彼女は無言で親指を「グッ」とサインをする。

「あは、あははははは・・・・はぁ」
由佳はただただ苦笑いするしかなかった。


「さて皆さん、僕は1年A組の担任となる大野順一と言います。科目の担当は数学と物理になります。物理のほうは2年生になって科目を選択しないと会えませんが、数学では顔を合わせることになると思います。皆さんとは歳が10歳ほど離れていますが、分らない事があれば遠慮なく聞きに来てくださいね。僕に分る範囲であればお答えします」


「なんだか物腰柔らかな先生だね」
先程の女子が由佳にヒソヒソと小声を掛けてくる。
「でもでも・・・由佳って数学ニガテなんだよね〜。確かに優しそうなセンセーだけど、どうせなら家庭科のセンセーが良かったなぁ〜」
「どうして? あの先生、私的には結構いい線いってると思うんだけど」
「家庭科のセンセーならお菓子分けて貰えるからっ!」
「・・・・あー、そうね。花より団子って感じするもんね」

「こほん」
大野は咳払いをし、一言付け加える。
「残念ですが僕は料理が苦手でして、期待に添えないようですみません。それと、数学が苦手でも安心してください。分らない所があれば手取り足取り教えてあげますので」

「あちゃー、聞こえちゃってるよぅ・・・」
頭を隠し机に突っ伏す由佳。
そこへ先の女生徒は助け舟を出そうと割って入る。
「はいはい、大野先生、質問してもいいですか」

「ええ、どうぞ」
「先生って彼女いますかー?」

「ナイスフォロー♪って、いくらなんでもそれ直球だよッ!?」

さすがにいきなりこの質問が来られるとは思っていなかった大野は苦笑いをして「そうきましたか」と一思案していた。

「ほら、センセー困っちゃってるよ」
「分る範囲なら答えるって言ってたし。それにほら、みんな知りたそうな顔してるよね」
その言葉に女生徒数名が頷いた。

「それに、若い男の先生が来たらこの質問は定番でしょ、て・い・ば・ん♪」
「それもそだねー」
「女の子なんだもん。こ
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