ヤの付く方々の朝礼(葵家の場合)

数年振りに遊び場の縄張りへと足を踏み入れる3名+1名。
とは言ってもそこはヤクザの縄張りでもある。

「誰もいないよな・・・いないよな? な?」
「お兄ちゃん、目に見えるものが全てじゃないんだよ。・・・そう、心の目で見るんだよ!さすれば道は開かれん!」

様子を見ながら先行する明彦と由佳。

「弘樹、ハリセン持ってる?」
「そんなもの持ってるワケが無いんだけど・・・何に使うつもり?」

「そこのバカ兄妹にツッコミ入れたいんだけど」
「・・・・・」

ここはあかりにツッコむべきなのだろうかと、ひと思案して彼女の主張を無言でスルーする弘樹。

「ところであんた達、本当に水白河を受験したの?」
「もーあかりん失礼だねー、お兄ちゃんとひろぽんはともかく、由佳が落ちるワケないじゃん」
「その兄をも恐れぬ不届きな発言、今ここで粛清したろか」
「・・・由佳と明彦、確か俺にテストの点数で勝った事無かったよね?」
「まあ、弘樹は凡人並の脳味噌があったからなんとかなったけど」

その言葉は褒めてるのだろうか、それともけなしてるんだろうか。

「おいおい、まさか俺らを脳味噌まで筋肉だとでも思ってんのかよ?」
「そうだよあかりん、この知能の欠片も無いプロテインが肥大化しまくった類人猿と由佳を一緒にしちゃダメだよー」
「お前はその類人猿と双子であるという事実を受け入れなければならんという過酷な運命にあるんだぞ」
「いいいいやぁぁああああああああああ」

「わかった。裏口入学ね」
「何だその躊躇なく確信した目は!?オマエ失礼にもほどがあるぞ!」
「そりゃあ転校するまでみんな一緒だったしね。どう考えてもあの成績で___」

「もー、話が進まないから説明しちゃうよ。あたし達スポーツの方で結構いい所までいって、水白河に推薦入学で入ったんだよ」
「そういうこった。理解したか? それにちゃんと筆記試験も受けてきてるからな」

「・・・・・」
「・・・・・・・・・・」

「うわーい、すっごい疑いの眼差し」

確かにこの二人の運動能力を考慮すればあってもおかしくない話である。
これだけ突出した人材は、どこの運動部でも咽から手が出るほど欲しがるだろう。

「そんな事より、急がないと遅刻しちゃう」
「うわーい、俺らの苦労がそんな事扱いされやがりました」
「・・・明彦、積もる話は学校についてからしようよ。廊下でバケツ持って昔話したくないし」
「なはは、確かにそりゃごめんだ」

「はーい、それじゃみんな由佳についてきてねー。遅刻ギリギリ組一行をご案内いたしまーす」


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「おーおー、なっつかしーぜ♪このタヌキまだ置いてんだ」
「ホントだー」

先行する橘兄妹は、何かを見つけヤクザ屋さんの厳格な正門____の、脇にある茂みへと駆け出していった。

「タヌキ?」
「ああ、たぶんタヌキの焼き物だよ。小さい頃にかくれんぼしてた時によく裏に隠れてたりしたからね。そっか、まだ置いてあったんだ」

幼少の思い出に浸る弘樹をよそに、あかりはヤクザの玄関に下げられた名札をまじまじと見つめていた。

    『葵組』


「小さい頃のあんた達って・・・一体何やらかしてたのよ。命知らずよねえ・・・」
「あはは・・・今じゃ考えられないよね。・・・・考えたくないかも」

子供にはヤクザなんてものは何の事なのか理解できないだろう。自分より大きな人間は皆おじさんおばさんである。
しかし成長した今となっては、命知らずな所業がてんこ盛りだった過去を振り返り血の気
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