第五話「Une fausse aile」

 背中の「WHEELING03」が火を噴く。
 先ほどと同じように、数十発の弾頭が上空へ飛翔しフランシスとユリエールへ降り注ごうとした。

「ユリエール!迎撃して!」

「ぇ、あ、はい!」

 やや気おされ気味だったユリエールに喝を入れるように指示。
 直ぐに反応したユリエールが後退しながら両手のライフルで迎撃作業に入る。
 それとほぼ同時にフランシスは背中の「EC-O307AB」を展開。三枚の羽が前方のメイを捉える。
 そして照準が赤く染まると同時にそれを発射した。橙色をした三条の光が砂を巻き込みながら直進していく。

『…っ!?』

 少し息を呑んだメイがすかさずサイドブーストで回避を試みる。
 だが、光のうちの一つがPAごと彼女の機体の肩へと喰らいつき、装甲を融解させる。
 GAの機体の多くは対実弾防御に特化している分、エネルギー兵器にはあまり耐性が無い。つまりはそれが弱点である。

 メイが反撃を試みようとライフルを構えるが、突如鳴り響くロックオンアラートがその行為を妨げた。方向は、上。
 迎撃を終えたユリエールがフランシスの指示で既に空中から接近していたのだ。
 両手の「AR-O700」のマガジンを装填し、メリーゲートをロック。降下しながら隙のない連射。

『くっ…迂闊だったわね』

 弾丸のシャワーを受け、頭部と胴体の上部にいくつもの弾痕を作りつつも、メリーゲートはバランスを崩すことなくそのまま後退しながら弧を描いて砂上をブースト移動。
 着地したユリエールも彼女とは逆の方向へ弧を描いて移動し、更にライフルを連射する。ワンマガジンを撃ち尽くしたところでバックブーストで間合いを離す。
 否、これは進路の確保だった。
 メイが牽制しようとライフルとバズーカをユリエールに向けて構えたが今度は前方から来る機影を目視で捉えた。

「そこっ!」

『忘れっぽいな、私』

 フランシスのジャンティ・アムールが接近していた。自身に対してメイが苦笑する。
 そのままフランシスは大きく踏み込んで、左手のブレードでメリーゲートを突こうとする。
 だが即座にメイが反応し、右足を軸に左バックブースターを機動。身を引くように九十度の反転旋回を行いそれをかわした。
 フランシスは慌てることなくクイックブーストで旋回し、ライフルをバースト射撃しながら後退する。

『(…間合いを確保できるわね)』

 メイはそれを見て後ろへ大きく後退、フランシスとユリエールの両方を捉えることの出来る位置まで後退しながら
背中「WHEELING03」を展開した。多数のミサイルハッチが波打つように開く。
 しかし、判断の間違いに気付いたのは二機を視界に捉えてから直ぐだった。
 ユリエールのジャンティ・アミティエが背中の「EC-O307AB」を既に展開していたのだ。
 後退したフランシスはともかくユリエールにはそのレーザーキャノンを展開してメイを捉える猶予は充分にあった。

「…当たって」

 ユリエールが小さく祈るように呟いて橙色の閃光を放つ。直撃コースだ。
 メイはすぐにミサイルのロックを解いて回避行動に移る。選択肢を間違えたのなら結果が最悪にならないよう行動すべきだ。
 先ほどとほぼ同様、今度は左足を軸にして九十度旋回。そして後退。
 横一線に並んだ三つの閃光は直撃こそ避けたものの、メリーゲートのPAをほぼ全て減衰させていた。見えない盾が無くなる。
 しかも反転旋回を行ったメリーゲートの胴体部は先ほど後退したフランシスの真正面を向いてしまっている。
 明らかに後手だった。

『…しま
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まろやか投稿小説 Ver1.50