#10:バグ・ハンティング -アミダ・アタック-

言を呈す。過ぎた事とは言え、ハインラインにも反省の様子が見られる問題を、グダグダと必要以上に引き摺られるのは、彼としても気分が悪かった。
 いい加減に許してやれと苛立ったクオレだが、しかし彼は前方の新地から上がった轟音と土煙でスティンガーを不意に飛び退かせた。他の2機が武器を構える中、立ち込める土煙からレールガンが、ついで忌々しい紫色の中量級2脚ACが粉塵塗れになって歩み出し、半壊しかかっていたCHD-MISTEYEに輝く緑色のモノアイをハンター達に向けた。
「最悪だ……なんて所から出てきてやがんだあのクソ!!」
 相手がファシネイターと分かるや、クオレは即座にブリューナクを猛連射し、反撃を許す事無く廃棄物に仕立て上げた。
 恐らく、以前のインファシティ襲撃の際に撃破されたものが瓦礫に埋まっており、今になって何らかの原因で突然再起動したのだろうとはクオレの推測であったが、それならば今度こそ二度と甦らないようにと、真っ先に飛び掛る。パルスキャノンの砲撃が機を掠める中、ハードフィストで大破したコアを更に引き裂き、チャージ率50%のブリューナクをゼロ距離から発射。ファシネイターは木っ端微塵となって瓦礫の山へと消えた。
「永遠に埋まってろやオラァ!」
 悪態を吐き捨て、アミダ撃破の事を思い出して道を急ぐクオレだったが、やはり憎悪に取り付かれた思考回路は宿敵へと向いてしまう。
「ったく、あんな所から出てくるか!? いやそれより、死んだんならあのまま永久にあそこに埋まってろと――」
 今度は横殴りの衝撃がクオレ機を襲った。幸いにもすぐに視界の平衡を取り戻したパイロットだったが、姿勢制御が上手く行かず、シートに固定された自分の体が横倒しのまま動かない。しかも、コックピット内が暑い上、赤くフラッシュしているメインモニターには外骨格に覆われた刺付きの細長い脚が写っている。
 以前クオレを襲ってきた、あのアサシンバグの脚だとすぐに分かった。
 一つ物事が分かれば後は連鎖的に物事が分かるもので、ファシネイターに思考を奪われていた隙を突かれ、飛びつかれてしまったらしいともクオレには分かった。そして、コックピット温度の急激な上昇とモニターの赤いフラッシュは火炎弾を浴びせられたのが原因だと察するに至った。これまで何度も乗っているスティンガーでは、機体温度の急上昇は赤いフラッシュで警告されると分かっていたからだ。
「離れなさい!」
 ディアマントが声を張り上げ、機が何度か揺さぶられた直後、軋るような悲鳴と共に足の1本と翅がクオレ機前方へと飛び、次いでまたクオレの視界が回転した。
 モニターには、リーサルドラグーンを手放した左腕のハードフィストをアサシンバグに見舞うブランネージュの姿があった。先の千切れとんだ足も彼女の仕業だろうとクオレには分かった。
 そのブランネージュは、再びハードフィストを見舞おうとするも、アサシンバグに組み付かれてしまう。だが、カニス・マヨルが冷凍弾を撃ち込むと形勢は逆転。液体窒素を浴びたアサシンバグは全身を縮こまらせ、全身の体液と組織をくまなく凍結させられて動きを止め、地面に転がって砕けた。
 液体窒素を噴射する冷凍弾は、狭い場所で使ったなら相手を窒息死させかねないシロモノであるが、しかしながら現在の戦場は密閉空間でもないので、人間を巻き添えにする事も少ない。しかも、弾頭内に詰められているのは酸性雨の原因になりうる酸化窒素ではなく、純度のきわめて高い窒素である。したがって、環境破壊のリスクはあまり気にせず撃てるのである。全く環境に無害ではないとは断言出
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まろやか投稿小説 Ver1.50