#10:バグ・ハンティング -アミダ・アタック-

トが呟く。
「謙遜はよせよ」
 生き残ったボーンマイトにハードフィストを見舞って沈黙させ、クオレは続けた。その隣ではブレイザー機がロケットで別個体の腹部を吹き飛ばしていた。
「歴戦の戦士ってんなら、俺よりゃアイザックスさんが相応しいだろうに。俺より3年もハンター暦長いわけだからな。俺と同じく15でハンターデビューして、もうすぐハンター暦10年になるんだからな」
「それは存じています。ですが、クオレも5年もハンターをやってるのでしょう? 2年未満で落命したり去っていくハンターも数多い中で、5年もやっているってのは大したものです。私だって、やっと今年で3年目になるのですから」
「止めてくれよ」
 まだ動いていたボーンマイトに止めを刺してから、クオレは続けた。
「大体、俺はまだ歴戦の戦士ってトシじゃねぇ。そのセリフは、せめてオッサンと言えるような年齢になるまでとっておけ。俺に使うにはまだ10年は早ぇよ」
 まだ20歳であるクオレは、自分がまだ歴戦の戦士どころか、ベテランと呼ばれる事にさえ相応しくないと思っていた。ハンター暦5年程度の自分がベテラン認定されたら、自分よりはるかに長い時を狩りや戦いに費やして来た面々は何なんだと言うのが、彼の言い分であった。
 しかしながら、現在の世界ではハンター暦3年未満で多くのハンターが落命したり、戦列に立てなくなるのが殆どである。それを考えれば、クオレは当人の考えがどうあれ、十分ベテランと言えるかも知れなかった。
 少なくとも、このメンバーの中においては。
「君はそういう所で謙虚だな……」
 アイザックスは呟いた。
 クオレが新たに現れたアミダ光線種3匹を叩き潰した直後、ハインラインが唐突に告げた。
「各機へ、ジュイファシティ・インファシティ境界付近で交戦中の地元ハンター達が救援を求めています」
「やれやれ、またクソ蟲の大群が湧いて来やがったのか?」
 アミダの群れを相手取るのもいい加減疲れたと零しかけたクオレだが、ハインラインが「違う」と返したので、思わず表情を硬化させ、姿勢を正した。
「アミダは少数です。ですがサイズが余りにも巨大な為にてこずっているとの事」
「巨大って、どれ位あるんだ?」
 アイザックスが尋ねる間に、ハインラインは別のハンターの機体から送られている戦闘の様子を、モニターに表示した。
 その外見は、いわゆる原種のアミダそのものであったのだが、そいつの下では破壊されたACの残骸が踏み潰されていた。ACの残骸のサイズと比較すると、そのアミダは少なく見積もっても2倍以上の大きさがあった。
「推定全長20メートル前後、と言った所です」
「そんなになるのですか……?」
 ディアマントが背筋を冷たくする横で、アイザックスは「分かった」とだけ返すと、武器をリーサルドラグーンに切り替えた。
「化け物め……」
「普通の人にとっちゃアミダの時点でバケモンだろ」
 ブレイザーに至極当然な突っ込みを、全く動じる様子も無く入れるクオレだった。
「巨大アミダは港湾区画に向けて進行中。戦闘映像からはイレギュラー的に巨大化した原種と思われますが十分警戒願います」
 ハインラインの説明を前に、ディアマントは瀬を伝う己の汗に気付いた。
 何しろ、今まで彼女が狩って来たのは、都市部やその周辺での依頼が多かったために、小型の機械兵や全長10メートル内外のモンスターといった程度が精々で、ACの2倍近い相手と直接対峙するケースが今までなかったのだ。
 一応見た事はあるが、それは映像・写真などの資料を介してであり、生きているものを現場で見るのは
[2]前へ|[3]次へ
ページ移動[1..10 11 12 13 14 15]
[7]TOP [9]目次

まろやか投稿小説 Ver1.50