#10:バグ・ハンティング -アミダ・アタック-

は見慣れているし、同じ境遇ゆえにその気持ちは痛いほど分かるので、ブレイザーは否定するような真似をしなかった。
 アイザックスはジナイーダへの恨みつらみを発する若者2人を一瞥せず、物陰でブラッドサッカーが蠢いていたのを見つけ、リベリオンで即座に焼き払った。
「ユーミル――いえ、タンザナイトは大丈夫かしら……」
 自分が楽な状態ではないが、ついつい弟の事を気にかけてしまうディアマントだった。
「そう言えば弟殿がいないけど、どうしたんスか?」
 戦っているうちは気にする余裕が全くなかったが、ブレイザーは改めてブランネージュの姿に、次いでレーダーコンソールに目をやり、いつも行動を共にしている身内がいない事に気がついた。
「今回は別行動してもらってます。私以外のハンターの皆さんの闘いからも学ぶべきだと思い、ヘルファイアーさんとオニキスさんに同伴させてもらっていますが……」
 ディアマントの心配を助長しているのは、瓦礫に混じって転がっているサイクロプスやスティンガーの残骸だった。破損の状態は十人十色と言った所だ。モンスターにやられたのか、以前の機械生命体襲来の際に撃破されたのかは分からないが、弟が駆る機体と同機種を狩る、より年長の経験者達すら倒されている現状が、優しい心を忘れていない女性イェーガーの心を痛めていた。ただし、破損したACの残骸に関しては全く気にも留めていなかったのだが。
「ホント、大丈夫かしら……」
 ディアマントの懸念を横に、クオレはハインラインに尋ねた。
「……機械軍団の動向はどうなってんだ? まだ相当数要るのか?」
 モンスター相手なら兎も角、量産機種とは言え機械生命体がまだインファシティに蔓延っているとなれば、ルーキーには厳しいかも知れない。特に機動性と速力、格闘性能に優れるネビロスが徘徊している様では危険だ。クオレでさえ手を焼く相手に出くわしたなら、経験不足のルーキーは簡単に斬り捨てられてしまう。
「機種如何ではルーキーがうろつくには相当マズイぞ?」
「ええ。現状から言って――」
 そこまで言い、ディアマントの心配を余計に掻き立て、集中力散漫から来る損害や職務怠慢等を起こされるのは得策ではないとハインラインは思い立ち、口を噤んだ。しかしながら私情が事実を隠して良い理由として正当化されないのも明確であったので、現状で確認されている機種の報告のみに留めることにした。
「現在確認されているのは、ドラグーンフライ、バルバトス、ソラックスと言った量産型機械兵ばかりで、ネビロスやレイヴンキラーと言った厄介者の存在は、今の所確認されていません。ですから、ルーキーハンターでも戦えない事はないでしょう。ですが……」
「何か問題が?」
 ディアマントの問に、ハインラインは苦い顔をした。
「敵機の質自体は大した事はないのですが、数が問題です。何しろインファシティ及びジュイファシティの各所に散開しているうえ、北方よりはぐれ者集団が流れ込んでますから」
 西側から迫っていた集団に関しては、政府軍が撃滅したために現在出現がストップしている事もハインラインは付け加えた。
「そして、まだ発見されていない敵司令塔が、はぐれ者達に攻撃を促している可能性も否定出来ません。何としても、機械生命体の拠点を発見し、撃滅しなくては――」
 ハインラインの通信を遮り、銃声と爆発音が一同の鼓膜を震わせた。何かと思ってアイザックスとクオレはレーダーコンソールに目をやり、ディアマントとブレイザーは機体を左右に振って周囲を見渡した。
 一同の右手側――南から多数の赤い点を引き連れた3つの味
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まろやか投稿小説 Ver1.50