#10:バグ・ハンティング -アミダ・アタック-

「みんな危ねぇ!」
 クオレの叫びに僅かに遅れ、3機のACBは一斉に急速後退した。直後、爆発四散した仲間の残骸を踏み越えたアミダが一斉に溶解液を噴射する。しかし既に距離を取っていた3機のACBに対してはその飛沫すら当る事がなく、ただアスファルトとコンクリートの壁面を焼いたに過ぎない。
 クオレは即座に連射モードのブリューナクで弾幕を張った。ナービス戦争時代よりお馴染みの原種アミダはこの掃射で次々に倒れたが、しかしその残骸を踏み越え、赤い外骨格をした5匹のアミダが迫る。そいつらはクオレ機を認めるや、口をもたげて赤々と燃える弾を吐き出した。
 だが、吐き出された火炎弾は弾速が遅く、クオレ機が歩いて射線上から逃れる事すら容易だった。そのままブリューナクを集束モードに戻し、溜めずに繰り出したビームにより2匹連続で爆発。残る3匹はカニス・マヨルのリベリオンで1匹が、ブランネージュのマシンガンで2匹が立て続けに粉砕された。
「9時方向!」
 ハインラインの声にクオレがすぐ反応し、機を前進させた。刹那、倒壊したビルの陰から火の玉が飛び出し、クオレ機が先程まで居た地点で大きく広がって燃え上がった。しかしカニス・マヨルとブランネージュにダメージを与えるには射程が及ばない。
 3機が振り向くと、ビルの残骸の陰に赤い外骨格のアミダが蠢いていたのが分かった。そして、3機は難なくそいつを片付ける。
「全くキサラギめ、豆板醤みたいなヤツをこさえやがって……」
 豆板醤みたいなヤツとクオレから言われてしまったこの火炎放射型アミダは、本来なら自爆攻撃に用いられる体内の特殊な化学物質を吐き出して攻撃出来るように改良されたものであった。出現が確認されたのは24時間戦争後、バーテックス戦争の最中にあった地球暦263年の事である。
「クオレ、3キロ北東にアミダ原種及び火炎放射種確認。君達のチームが最短距離に居ます。数はおよそ30匹。君達の装備でも十分排除可能です」
「分かった」
 クオレはすぐにブースターに点火、スティンガーを進ませる。
「アミダだけか?」
 アイザックスの質問に、ハインラインは「はい」と答えた。その間に、カニス・マヨルは先行していた後輩の標準仕様スティンガーに追いついていた。
「ハインライン、連絡怠慢ですみませんが、こちらの担当オペレーターが到着早々、機械生命体襲来で負傷。よって、しばらくこちらのサポートもお願いします」
「了解」
 生物兵器退治を行っているとは言え、まだインファシティ内は多少なりとも機械生命体が徘徊しており、各地に被害をもたらしている。チェインの基地も例外ではなく、ハンガーが攻撃されたり、更には撃破や自爆特攻によりに四散した破片で死傷者が相次いでいた。これによりディアマントの担当オペレーターが軽傷を負っていたのだった。
 それにも拘らず、任務遂行上で大した問題になっていなかったのは、まだ戦列に立った直後の上、オペレーターがいる仲間のハンターと行動を共にしていたためであった。
 ディアマントは通信モニターの接続先ダイヤルをハインラインのものに設定し、微笑み混じりで発した。
「今度は私をヘドロの沼に沈めないようお願いしますね」
「肝に銘じます……」
 ディアマントとしては若干の冗談交じりであったのだが、失敗を引き摺っているハインラインにとっては、直接通信の第一声にして極めて耳の痛い言葉である。一瞬声を詰まらせたハインラインだったが、それでも何とか事務的姿勢を取り繕い、了解した。
「……もう許してやれよ、マジで。ジのつくクソ女と違うんだしよ」
 クオレが苦
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