「はて、どいつに頼んだら良いのやら……」
アストライアーは、レイヴンとその搭乗AC名をリストアップしたメモを片手に、ソファに腰掛けていた。
「リストアップは終わったのか?」
近くで椅子に腰掛け、エレノアと一緒になって子供向け番組を見ているブルーネージュが横目で話し掛けてきた。
「まあ、な……」
「しかし、それで良いのか?」
ブルーネージュがさらに尋ねる。
「確かに、直美は何をしてくるか分からない。機体自体がオールラウンダーであり、あらゆる状況下に過不足なく対応して来る。だから似たような戦闘スタイルの相手を探すというのは納得が行く」
ちょっとごめんとエレノアに声をかけてから、ブルーネージュはアストライアーが作成したリストに目を落とす。
「……と、数秒前までは思ってたんだが」
リストにストリートエネミーやアップルボーイの名があった事を知って、ブルーネージュはため息をついた。
「そいつらじゃ練習相手としては役不足だろう。直美はもとより、貴女と比べてランクに差があり過ぎる」
「そうは思ってたんだ……思ってたんだが……」
アストライアーは苦い顔となった。
実のところ、アストライアーは来るべき直美との決戦に備え、その練習相手となるだろうと思って相手候補のリストを作成したのだ。リスト入りの基準は直美のAC・ヴァージニティーと同じコンセプト――得手不得手のない、バランスタイプの中量級2脚ACを操る事であった。
だが、リストアップされているレイヴンはいずれもアストライアーよりも格下の面々ばかりである。
元々バランスタイプの中量級2脚は、レイヴン試験に挑む際に搭乗させられ、通過後はそのまま当人に支給される機体とコンセプトは同じ。つまり、正規の手続きを踏んだレイヴンなら誰もが一度は乗っているものなのだが、ある者は自分の得意とする戦闘スタイルに合わせ、またあるものは興味本位で手を出したら気に入ってそのまま使うようになったりで、程度の差こそあれど機体アセンブリは必ず変えてしまうため、バランス形の構成を維持するレイヴンは少数派であった。
それに拍車をかけていたのが、バランス型のACは特化型のACに性能面で押し切られる事が多いと言う、アリーナでの戦闘結果だった。
事実、レイヤード第3アリーナを見ても、完全なバランス型の構成と言えるACを駆るのはエースやストリートエネミー、アップルボーイと言った面々ぐらいであり、そのエース駆るアルカディアも軽量級OBコアに最高出力ブースターを搭載して機動力を高め、かつキャノン2門とスナイパーライフルによる火力も重視されている為、完全なバランス型とは言いがたい。
その為、直美との戦いに備えての練習試合の相手となりそうなレイヴンを探すと、これが相当限られてしまっているのが現状であった。一応ブルーネージュのプレーアデスもバランス型であるのだが、彼女は2日後に依頼がある事を理由に、練習試合の相手となるのを拒否していた。
直美との試合までは、今日を入れてあと3日。もちろんその間にアストライアーも訓練施設で練習を行うなど、出来る限りの事は行って来た。しかしながらエレノアの世話や、暴徒の鎮圧に出向かされたり、ミラージュの拠点警備に駆り出されたりしたおかげで、練習はまだ不十分だと見ていた。
いや、直美を相手取る上で、練習に十分なんてないとアストライアーは見ていた。何せ相手は実力未知数の存在で、しかも実際に戦うまで何をしてくるか分からないのだから。
「ね、おかあさん」
頭を抱えるアストライアーを察する様子もなく、エレノアが声を掛けて
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