#10:バグ・ハンティング -地獄で同業者-

クオレ、とどめは任せたよ」
「はい」
 エネルギー充填率が65%に達したブリューナクを構え、クオレはブラッディランサーに向き直る。再び巨蟲が攻撃しようとするや、カニス・マヨルは冷凍弾を撃ち込んで弱らせ、動きを鈍らせた。
 ブラッディランサーの急所――口がブリューナクの砲口に向く。
 クオレは間髪居れずに蓄積されたエネルギーを開放、指向性を与えられた光の帯が口腔に突っ込み、貫通するまでは至らずとも内部組織をズタズタに引き裂いて焼き焦がし、本日2度目のブラッディランサー撃破スコアを記録する。
「クオレ、補給は終わったか?」
 丁度モンスターが息絶えた所で、ヘルファイアーが訊ねてくる。
「終わった。で、何の用だ?」
「ちょっとばかり面倒な事になった。手伝ってくれ」
 クオレは了解し、すぐに向かう旨をヘルファイアーに伝えた。
「よし、オーバードブーストで戻るぞ!」
 カニス・マヨルに先導される形で、クオレは再発進から5分も経とう頃にはヘルファイアー達との合流を果たしていた。
 ハンター達は機械生命体との交戦の余波で陥没し、下水道への口をあけた通路の周辺で戦っていた。アミダやマガットを這い出した端から撃ち抜き、ブラッドサッカーを踏み潰していく。
「全く、数が多すぎますよ!」
 のべつ幕なしに襲い掛かってくるマガットやアミダ、ブラッドサッカーと言った怪物たちに、タンザナイトは早くも手を焼いている様子だった。
「こいつら、いっそ殺虫剤ぶちまけて皆殺しにすればいいんですよ」
「バカ野郎! テメェ正気か!?」
 通信回線越しのクオレが凄まじい形相で怒鳴ってきたため、タンザナイトは思わずたじろいだ。
「街中で殺虫剤なんざばら撒いたら人にも影響出るだろ!!」
「その通り」
 少しは考えろと続けようとしたクオレは女性の声に遮られ、右手にマシンガン、左手にリーサルドラグーンを携え、バックパックの右側にミサイルポッド、左側に筒状のロケットランチャーをそれぞれ据え付けた、青白い紋章を持つ純白のサイクロプスが、クオレ機とタンザナイト機に割って入った。ディアマントがやっと出撃してきたのだと、周辺のハンター達には分かった。
「モンスターを殺したとしても、人に被害が出ては意味がない。いつも言っている筈よ」
 殺虫剤が本格的に使われるようになったのは、まだ国家が地球を支配していた頃――第二次世界大戦の後だが、当時より多用されていたDDT等の有機塩素系殺虫剤は自然界で分解しにくく、動物やヒトの体内に蓄積するために有害性が問題視され、多くの国で製造販売禁止、あるいは生産が中止されるまでに至った。その後殺虫剤は人畜に対してはなるべく毒性が低くなるように開発が進められたが、それから10世紀近くが経過した今でさえ、人体に対する毒性はゼロとはなっていない。
 ましてや、モンスターを毒死させるほどの殺虫剤となればその量も膨大なものとなり、大量散布によって人体及び環境に影響が出る可能性は否定出来ない。事実、発展途上国で大量の殺虫剤を用いた所、鳥類や水棲生物、更には無害な昆虫までも大量殺戮した事で生態系破壊が生じる一方、天敵が居なくなった事で殺虫剤に耐性を持つ害虫を蔓延らせる結果になったという記録が残っている。
 そうかと言って量を減らすとなると、今度は少量での結果を出すために効果――つまり毒性を強めねばならないが、昆虫型モンスター用の殺虫剤となれば化学兵器も同然の猛毒性であり、人間がうかつに吸引・経口摂取すれば重大な危険が伴う。しかも、今のハンター達は市街地で戦っているのであり、そんな中で大
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