#10:バグ・ハンティング -地獄で同業者-

トを吹かすなど激しい戦いが目立っており、常人なら体力的にはかなりの消耗となっている所であるが、強化人間であるが故に、クオレは体力的にはまだまだ戦える状態であった。つい数時間前まで生死の境を彷徨っていた男だと言われたなら、誰も信じないだろう。
 そんなクオレは、早速飛来したベルゼバブを拡散ビームで撃ち落し、ビルの陰から這い出して来たアミダの群れを連射モードに切り替えたブリューナクで退治にかかる。カニス・マヨルも途中から加わったため、アミダ全滅には殆ど時間が掛からなかった。近くにはフライペーパーが飛行していたが、これは全く障害にならないと見なし、見逃す。
「クオレ! 右!」
 アイザックスに叫ばれ、クオレは咄嗟にスティンガーを左手側に飛び退かせた。振り向くと、ブラッディランサーが倒壊したビルを乗り越えて接近してくるのが分かった。
「アレは倒しましょう! 放置するとマズイですよ!」
「俺もそう思ってたところだよ」
 クオレは即座にブリューナクを収束モードにし、エネルギーチャージを開始。その間にカニス・マヨルはブラッディランサーに急速接近、繰り出される爪と尾の一撃を上昇して回避してのけると、右腕のランチャーから砲弾を発射、着弾するや沸き立つ液体が即座に白い煙を上げて巨蟲を霜で包んだ。軋むような悲鳴を上げ、ブラッディランサーは攻撃を忘れてのた打ち回った。
「冷凍弾?」
「都市部でリーサルドラグーン使うとなると、これしか撃てるのがないんでね」
 アイザックスは苦笑した。
 おおいぬ座を意味する機体名を冠しているカニス・マヨルには、クオレが操っている標準仕様のスティンガーに見られるハードフィストはない。パイロット自身が格闘戦を不得手とし、更にオーバードブーストを標準装備しているスティンガーの運動性を以ってすれば距離を離す事も容易であったため、自分には近接武器の必要性が薄いと判断、取り外されていたのだった。
 その代わり、ハードフィストが取り付けられていた左腕には、出力こそ抑えられているが故障や破損、そしてエネルギー切れにならない限りは無制限に撃てるレーザーガン“リベリオン”が装備されていた。これはタンザナイトのスティンガーにも装備されているシロモノである。
 AC装備用のレーザー兵器は、威力を優先した為にレーザーの出力が銃の耐久力に比べて高くなっていたため、レンズや発射系統を磨耗させてしまい、それゆえ発射に際して回数制限があった。だが、リベリオンを初めとするACB搭載用レーザーガンはランニングコストや銃自体のメンテナンス性も考慮され、出力を軽量級エネルギーEOと同レベルにまで抑えている。そのため、発射系統そのものが故障しない限りは、一応無制限に使用可能であった。
 ただ、出力を抑えているとは言え、放たれる切れ目のないレーザーはドラグーンフライやソラックス、バルバトスに代表される量産型機械兵を撃墜するには十分な火力を持っている。
 右腕に装備されているリーサルドラグーンだが、これはACB用に開発された最大装弾数18発のグレネードランチャーで、先程の冷凍弾を発射したのもこれである。
 冷凍弾の弾頭にはマイナス170度の液体窒素が詰められており、着弾すると弾頭が容易く壊れて液体窒素を噴出、生体組織を容易く凍傷を負わせ、密閉空間で使用すれば酸欠に陥らせる事も出来る。さらに熱を奪われた空気を吸引させる事で、呼吸器系を凍結させて相手を窒息死させる事さえ可能としている。場合によっては電池やジェネレーターなどを凍らせてエネルギー兵器を無力化するのにも使われる。
「さあ
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まろやか投稿小説 Ver1.50