#10:バグ・ハンティング -地獄で同業者-

て来た。
 基地では、確かにハンガー周辺に補給用車両や整備作業用MTが展開し、戻って来たイェーガー・ハンター側機動兵器に応急修理や補給を施し、時として損傷したパーツを交換していた。中には損害の嵩んだ機体が乗り捨てられている区画さえ存在した。誰かにレンタルされていたと見える、イェーガーズチェインの紋章が入ったスティンガーやサイクロプスがその殆どを占めている。
 滑走路脇にはカリバーン隊の6機を初めとしたワスプが駐機されているが、その近くでさえスティンガーが立ち並べられたまま整備を受けている。その脇の滑走路からは別のワスプが離陸して行った。
「俺はここで待っている。補給が終わったら一声頼むよ」
「了解」
 クオレは一度アイザックスと別れ、スティンガーがあった地下格納庫に戻った。
 地下格納庫の中でも機体の修復は行われており、デス・マーチを余儀無くされている事でストレスが極限に達しつつある整備士達が怒鳴るように部品をよこせ、工具をよこせと声を張り上げている。色合いから、他地域から遠征して来たと分かるイェーガーの機体も数多く見られた。
 中にはイェーガーから何か注文を押し付けられたのであろう、それは俺達の管轄じゃないだの他所に頼めだのと大騒ぎになっている集団もいた。この非常時に何をやっているんだと一瞥し、クオレは偶然近くにいたタンクローリーに燃料補給を頼んだ。
 タンクローリーのドライバーが承諾し、すぐさまクオレ機に燃料補給を行う間に、当のパイロットはスティンガーを降り、発見したエージェントにブリューナクの弾切れを連絡。エージェントは現在多忙である事を理由として、格納庫内の武器ラックにある武器なら持ち出して構わない事、そして使用済みのものはあそこに置いておくようにと手で示した。
 確かに、ハンガーの隅には弾切れした武器が転がされており、作業用MTがそれを運び出しては弾倉を交換し、武器ラックに戻している。補給に来たスティンガーが、早速ブリューナクとマシンガンをラックから引っ張り出して装備し、再び戻って行った。
 クオレはエージェントに礼を言うと、スティンガーに戻った。
 その途上、純白に塗装され肩にヴィクトリア様式の蒼白い紋章がマーキングされたサイクロプスが視界に入った。そしてその前で、整備士と話をしている白銀のロングヘアをした女性が目に付く。タンザナイトが言っていた姉で、嘗てのハインラインの担当イェーガー・ディアマントだ。
 ディアマントは整備士と向かい合って何か話をしていたが、続いて彼女のサイクロプスの方に、一緒に眼をやっている。整備士の手が武器か機体に向いているのかは分からないが、機体についての説明――恐らくは整備状況についての状況説明を行っていだろうとクオレは見た。
「燃料補給完了しました」
 タンクローリーのドライバーから連絡を受けるや、クオレはディアマントに背を向け、作業員がタンクに繋がるパイプを一緒に取り外してから、コックピットに戻って機を再始動させた。指定された場所で弾切れのブリューナクを武装解除し、エネルギー残量が最大まで蓄積されていたものを拾い上げて装備、急ぎ地上にとって返す。
「アイザックスさん! 補給完了!」
「分かった。行こう!」
 オーバードブーストでインファシティへと舞い戻っていくクオレ機に、カニス・マヨルが続く。フラフラと飛びながらレーザーとプラズマを撃って来たソラックス3機を生贄にし、クオレは狩りに戻って行く。
 この時点で、クオレが戦闘を開始してから4時間が経過している。ACBとは言え、時にオーバードブース
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まろやか投稿小説 Ver1.50