#10:バグ・ハンティング -地獄で同業者-

ガーに乗っていた事について、問う事はしなかった。大体、愛機が破壊された際などに、MTやACBをレンタルする事も少なくない同業者達である。クオレがスティンガーに乗っている理由も、恐らくはグラッジパペットの大破が原因だろうと察していたのである。原因が何であるのかまでは分からないにしても。
 そして、眼前のハンターに随伴しているアルジャーノンの姿がないことも、ヘルファイアーは指摘しなかった。
 第一、13歳でイェーガーをしているとは言え、彼にとっては全く関心のない事であるのだから。年端も行かぬ少年がACに乗っている事を不安視するのは、人間的に仕方ないとしても。
「あれ、アルジャーノンは? それに何でスティンガーに乗ってるんだ?」
 年長者が気にも留めぬ事を、タンザナイトは尋ねた。
「RKにやられた」
 そのため、止む無くスティンガーを借りて害虫退治に勤しんでるんだとクオレは言った。ハインラインは、その横からアルジャーノンが生きている事を付け加えた。
「で、担当ハンターとイェーガーがダブルでやられたってのに、お宅のハインライン殿は図々しくも生きているんですか」
 タンザナイトのハインラインに対する姿勢は厳しい。発言の随所に、隠そうともしない刺が感じられる事からも明確だ。
「……やめとけ」
 オニキスが宥めるが、タンザナイトは聞く様子を見せない。
「彼もナビゲートミスでバチが当ればいいんですよ。いつだったか、姉さんをヘドロの沼に沈めた時みたいにね」
「いい加減にしろ!」
 クオレが怒鳴った。
「たかだか1度の失敗なんか気にしてどうすんだテメェはよ!? それともテメェは何か? ナビ無しでガラクタとクソ蟲とクソジナの群れに放り込まれたいのか!?」
 3年前にタンザナイトの姉であるディアマントが、ハインラインのナビゲートミスでヘドロの沼に沈む羽目になり、タンザナイトはその事を未だに根に持っている事をクオレは知っていた。幸い、ディアマントはアイザックスを初めとした同業者達によって救助され、現在もイェーガーとして活動しているものの、姉を敬愛するだけに、タンザナイトの怒りは大きかった。ハインラインがオペレーターと言う、時としてイェーガーの生死を左右しかねない立場の人間であるだけに、尚更。
 だが、クオレにとっては最早過ぎた事である。ジナイーダのような存在なら兎も角、ディアマントも生きている事だし、根に持ったってしょうがないと見ているのだ。何より、自分を常に支え、また彼自身も信頼を惜しまないオペレーターである。他人とは言え、貶されれば不愉快にもなろうものであった。
 ましてや、激情家のクオレが黙っていられるはずもない。
「大体お前、俺よりハンター暦短いくせに、俺をナビゲート出来んのか? 出来ないってんなら、黙ってろ」
「……すみません」
 そんなクオレに怒鳴られ、タンザナイトはすごすごと引き下がった。
 タンザナイトは18歳でイェーガー暦は半年過ぎたばかりのルーキーである。年齢としてもハンターのキャリアとしても、クオレが圧倒的に上であり、喧嘩を吹っかけた所で勝ち目など無い事は明確であった事は彼にも分かっていることであった。
 それ以上に、ジナイーダが全ての根源とは言え、クオレの偏執狂じみた問題児ぶりはタンザナイトも知る所である。相手の説教に説得力があるのかどうかは疑問だと感じているが、かと言って反論したり、下手に喧嘩を売って事をややこしくするべきではないと見ていたと言うのが正直な所であった。
 一連の流れの中でも、ハインラインは無言のままであった。生真面目さ
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まろやか投稿小説 Ver1.50