#10:バグ・ハンティング -地獄で同業者-

ーカーには、動き回れる程度の機動力は備わっている。距離もあるため、円運動によるマシンガンの回避程度は、ヘルファイアーにとっては苦とはならない。ブースターの発熱量こそB05-GULLに匹敵していたが、バレットストーカーもまた、ナービス戦争時代やその後の戦乱時代のACとはまるで違う。当時なら過剰発熱でエネルギーが低下してマトモに動く事も出来ない有様であるが、この機もブースターの発熱で熱暴走を起こし、機体の足が止まる事は決してない。
 その間にも、プラズマが砲身でチャージされていく――膨張したプラズマによる、緑色の光が砲身から生じていた。
<発射準備完了>
 バンクと左右の細かい踊りを交えながら、機体を降下させてヘルファイアーは発する。
「アイザックス、オニキス! 離れろ!」
 愛機が接地する一瞬の間に、アイザックスとオニキスは互いのスティンガーを急速後退させた。バレットストーカーの攻撃を確実なものとするため、互いの得物を牽制に使いながら。
 間髪入れず、ヘルファイアーは無言のままファイアーボタンを押した。刹那、ナービス戦争時代から変わらぬ緑色の光線が繰り出され、一瞬でバレットライフに突き刺さった。このレールガンはメーカーこそ変わったが、外見と弾速は往時から変化がなく、しかも出力に関しては、「変態企業」と言わしめたキサラギの技術陣によって、旧型番時代比の約2倍と言う大幅なパワーアップが施されていた。チャージの後に繰り出された緑色の光線は超高速でバレットライフのコアを捉え、コア前面の装甲を派手に吹っ飛ばした。
 そして、コアを抉られたバレットライフはスティンガー2機にとどめの掃射を見舞われ、その動きを止めた。
 バレットライフに殺されずに済んだクオレは振り返り、バレットストーカーへと機体を向ける。白い重量級4脚は、既に機能停止したバレットライフのコア目掛けてリニアガンを見舞い、コックピットのあるあたりを叩き潰していた。
「助かった。危ねぇ所だったぜ……」
 所々傷付きながらも、何とか戻って来たクオレ機に気が付き、ヘルファイアーは攻撃を止めた。
「……貸しにしとくぞ」
 ヘルファイアーは表情を崩さずに答えた。
「無事だったかい?」
「大丈夫ですよ」
 クオレは通信を入れてきたアイザックスに、暴言の目立つ彼としては珍しく敬語交じりで返した。金髪に黒い瞳をした、精悍な印象を漂わせる男性が、それは良かったと頷く。
 一方、癖が何一つ見当たらない黒髪と黒い瞳、そして贅肉のない細身から生真面目な衣装を漂わせるオニキスは無言で、感情を表に出さないままであった。だが、クオレが礼の意味でサムズアップすると、彼も親指を立ててみせた。
「しっかし、お前らが来てたってのは知らなかったぜ」
「今日来たばかりだ」
 オールバックにしたグレイの頭髪、青い眼で眉間から頬にかけて傷がある顔のヘルファイアーだが、物騒で闘争的なイメージのあるその名とは裏腹に、彼の口調は抑揚に乏しい。傍目には冷たい奴という印象を抱かれる事だろうが、クオレには既にそれは分かっている事だった。
 何故なら、ヘルファイアーとスティンガーを駆る3人は皆、クオレと同じ都市を拠点としているイェーガーまたはハンターなのだ。そして、ヘルファイアーは必要以上の事は口にしない比較的寡黙な男であり、明朗快活なアイザックスはクオレの面倒を何かと見てくれた事、更にはオニキスが、クールを通り越して無表情一歩手前な青年であるのも、クオレには分かっていた事だ。
 クオレについて認知のあるイェーガー及びハンターもまた、彼がスティン
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まろやか投稿小説 Ver1.50