#10:バグ・ハンティング -地獄で同業者-

量の殺虫剤を使用する事は化学テロも同然であった。
 クオレもその辺りは知っており、ゆえにタンザナイトのあまりにも短絡的な考えを咎めたのだった。
「レイヴンじゃないんだから、手段を選ばないような言動はやめて」
「……すみません」
 クオレが噛み付いてきたのは不服であるが、姉を慕うタンザナイトとしては、彼女に反抗する気などなかった。リベリオンでアミダを打ち倒して頭を下げた。
「口より手を動かしてくれないか?」
 タンザナイトを咎めたディアマントだったが、今度はヘルファイアーから苦言を呈される。彼は2丁のマシンガンで、這い寄って来たアミダを片っ端から倒していた。
 失礼、とだけ返すと、ディアマントは愛機「ブランネージュ」の左手に握られたリーサルドラグーンを発砲した。これから放たれた榴弾もまた液体窒素を満載しており、低温を嫌うマガットから一瞬で体温を奪い、体側の気門を凍結させて窒息死に追い込む。
 その隣では、無言を保つオニキスのスティンガーがガトリングガンを撃ちまくっている。クオレ機とカニス・マヨルも、それぞれ射撃に加わった。
 更に、航空機が陥没地点めがけてミサイルを射出、クオレたちには見えなかったが下水道内に蠢いていたアミダをブラッドサッカーの群れもろとも吹き飛ばし、陥没地点から炎を吹き上げた。
「くっ!?」
 鉄が軋む音に咄嗟に振り返ると、バレットストーカーが機を激しく揺さぶっている。その背中には、ビルの影あたりから這い出して来たのだろう、翅が生えた飛行可能なアミダの亜種が取り付いている。
 咄嗟に、クオレはハードフィストで翅付きアミダを払い落とし、間髪居れずに連射モードのブリューナクで焼き払った。
「……貸しはチャラだな」
 助かったと小さく呟き、ヘルファイアーは荒げる息を静める。腕は確かなこの男だが、クオレとは違い格闘戦には滅法弱く、懐に潜られると手も足も出ないのが弱点であった。
「陥没地点はどうなりました?」
 ハインラインに尋ねられ、クオレは怪物たちの射殺体が累々と転がる穴蔵を見下ろした。
「化け物は出てこなくなったようだ」
「了解」
 ハインラインが返す間に、アサシンバグがブランネージュに飛び掛った。だが、ディアマントの反応は早く、リーサルドラグーンによる一撃の下に撃墜してのけた。一瞬で冷凍処理されたアサシンバグは陥没箇所に転げ落ち、砕け散る。
「だが、まだあちこちに化け物が居るみたいだ」
「そうですね。チームを分割してみてはどうですか?」
 ディアマントに提案されてから少し考え、クオレはハインラインに意見を仰いだ。
「化け物の出現とハンター達の展開状況はどうなってんだ?」
「湾岸地域除いてほぼ全域に展開してます」
 ハインラインは上空の偵察機からリアルタイムでデータ更新されているマップを見やって答えた。
「モンスターは相当広範に渡って行動していますが、出現が報告された種の戦闘能力を考慮するに、スティンガー単機および小集団でも作戦行動は可能と思われます。勿論万が一の事も考えられますので、その辺は君の裁量次第ですが」
「分かった」
 クオレ機の通信回線が、ハインラインからディアマントに戻される。
「ディアマント、2チームに分かれて蹴散らそうぜ」
「分かりました」
 提案を容れたのだろう、バレットストーカーがすぐに離れて行った。
「ヘルファイアーさん、私はクオレさんとアイザックスさんを連れて行きます」
「分かった」
 オニキスは何も言わないが、概ね賛成の意であろう。だが、タンザナイトは疑問を呈している。
「僕と一緒には行かないん
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まろやか投稿小説 Ver1.50