#10:バグ・ハンティング -混沌の狩場-

したのですか?」
「多分OLだと思うけど、ブラッドサッカーに襲われていた」
「で、どうでした?」
 クオレは首を横に振った。
「そうですか……」
 ハインラインはそれ以上尋ねようとしなかった。
 丸出しの尻から吸血され、挙句腸を貪られるという酷い惨状で命を落とした女性の冥福を祈りながら、クオレは帰還を急ぐ。だが、その哀悼も数秒後には激しい怒りに転じたのだが。
「畜生、それもこれもあのロクデナシのド畜生女のせいだ! あのクソが妨害しなけりゃ、さっきの超絶変態ヒルを駆除出来ていた所だったのによ! いや無駄な武力闘争でヒル退治の予定をパァにしたクソッタレのレイヴンどもも同罪だ!」
 さまざまな暴言・毒舌・誹謗中傷がジナイーダに、ついでにレイヴン達にも吐き出された。
 しかし、クオレ機前方から大量の民間人が逃げて来たため、悪口は不意に中断。事態が飲み込めないながらも、彼は恐怖に駆られ、着のみ着のままで必至になって駆けて来る人々に「早く逃げろ!」と怒鳴る。
 一体何事か――次の瞬間には、赤く縁取られた漆黒の外骨格を持つ8本足の巨大節足動物が現れ、逃げ遅れた人間達を次々に串刺しにし、顎で粉砕し出した。巨大なクモではない。確かにそれはクモに酷似した姿ではあるが、全長15メートルに達する巨体から、モンスターである事は明確であった。更に言えば、そいつに「ブラッディランサー」の名がある事もクオレとハインラインには既知であった。
 サソリを思わせる鋭い刺の付いた尻尾と、名の由来である血に染まったような赤い馬上槍の如き爪を持つ第1肢、そして頭胸部をはじめ、クモ型の本体は全体的に鋭角的なフォルムをしており、刺を幾つも備えた複雑な構造の顎が、クオレを前に憤怒とも威嚇とも、更には歓喜とも取れる軋りを上げる。
「野郎ッ……!」
 クオレは即座にブリューナクを集束モードに切り替え、エネルギーチャージを開始した。
「援護する」
 恐らくはここに遠征し、先程まで近くで戦っていたのだろう、ハンター操るACが加勢に現れた。2丁のMWG-MG/800が火を噴き、異形の巨蟲目掛けて弾丸が降り注ぐ。
「おい、そいつにそんな豆鉄砲は効かねぇぞ!」
 クオレの言うとおりだった。ACやMT相手だったならば押し切るように勝利する事も難しくない連射力を伴ったマシンガンの弾だが、ブラッディランサーは衝撃で身体を軽く揺さぶられた程度で、外骨格には傷一つ付いていなかった。
「ミサイルを使え! そいつなら外骨格にも通じる!」
 ハンターが駆る青と白のACは、各種センサーを備えたMHD-MM/004、付加機能こそないが旧型番CR-C83UA時代から優れた防御性能に定評のあるCCH-04-EOC、優れた省エネ性でCR-A92XSから型番が変更された今尚使われるCAL-66-MACH、24時間戦争時代は死角なしと謳われたCR-LH92A3改めCLM-02-SNSKA1と言うフレームに、旧型番WB05M-SATYROS時代より誘導性に難を抱えるも、弾速と威力に優れる中型ミサイルを放つMWM-M24/2が積まれている。上腕部には旧型番CR-E73RM時代と同様、4連装のミサイルを3回発射可能なCWEM-R12を搭載している。
 クオレは過去に戦った経験から、ブラッディランサーの外骨格にはライフルやマシンガンは通じないが、ミサイルまでは防げない事を知っていた。ACに乗っているハンターもそれを察知したのだろう、武器を切り替え、中型ミサイルを撃ち込んだ。
 AC相手に使うにはいささか難を残すミサイルであるが、そのミサ
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