スライムとなって活動・増殖を始めたと言う、笑えない話も聞いていた。
クオレが知る限りでは、ブラッディスライムを撃破するにはレーザーやプラズマ等の非実体兵器、あるいは高熱兵器――ACで言うならば火炎放射器やナパームロケット等で焼き尽くすか、酸や化学薬品で細胞組織そのものを破壊するしかない。一応、液体窒素で凍結させた後に焼却処分した話も聞いている。
ブリューナクでも始末出来るとは知っていた為、クオレはまず、ダメージを見るために連射モードに切り替えて発砲した。だが案の定、ブラッディスライムは体表のいくらかを焼かれながらも活動を続行していた。
そのクオレを獲物と認識したのか、或いは自己の生存を脅かす外敵と判断してかは不明だが、ブラッディスライムは赤く毒々しい泡を、クオレ機目掛けて噴出した。泡と言っても粘液塊だが、その中には酸も含まれているため、喰らえば当然スティンガーの装甲にダメージが及ぶ。クオレ機は泡を喰らうまいと、ブーストダッシュでその場を離脱した。
ACよりも一回り小柄なスティンガーだが、搭載されたACB用ブースター・エッジB-T221は、燃費重視型とは言え巡航時においても時速380キロと言う、現行の中量級2脚ACクラスの速度を発揮する。おかげでスライムの泡を回避するには全く困らない。
バーテックス戦争時代は、当時の主力兵器であるACは時速500キロが出なければ遅いと言われており、エッジB-T221搭載時のスティンガーもそれに倣い、最大出力で時速550キロを出せるし、オーバードブーストも起動すれば時速700キロ台を容易く叩き出す。だが燃費・旋回性・パイロットの対G性、そして都市部での高速移動に伴う衝撃波による周辺被害など、様々な問題があるため、そこまでの速度を出す必要性は薄かった。
何より、ブラッディスライムの赤い毒泡を回避するに、ピーク速度は必要ない。
お返しだとばかりに、クオレはスティンガーを集束モードに切り替え、エネルギー充填率25%で発射した。光線をもろに浴びたブラッディスライムは半分蒸発させられた格好で、瓦礫の中に引っ込んでいく。
「逃がすか!」
クオレは再びエネルギーをチャージ、充填率23%のブリューナクで瓦礫を吹き飛ばし、赤い不定形生命体に止めを刺した。
いや、中央のドーム状部位は焼き払ったが、その周辺に飛び散った粘液は、かすかに脈打つような動きを見せている。こうなると拡散モードで焼き払うのが無難と見ているので、クオレはすぐに念入りに潰しに掛かった。
おかげでブラッディスライムは排除できたが、ブリューナクの残りエネルギーを更に酷使する結果になってしまった。
「あと8%か……」
基地に帰るまでエネルギーが持つか、クオレはいよいよ不安になって来た。しかも、そんな時にベルゼバブが飛来。すぐさま拡散モードのまま一度発砲し、撃墜に成功するが、エネルギー残量は7%に減少した。
少し進むとブラッディスライムにまたも遭遇。泡をジャンプで回避し、頭上から拡散モードで3回射撃して中央の盛り上がった部位を破壊するが、エネルギー残量は4%に低下。
「くそッ、これ以上は無理だ!」
最早ブラッディスライム排除にはエネルギーが足りないと判断し、クオレは完全撃破出来ない旨をハインラインに伝えると、帰還の足を早めた。
「ブラッディスライム粉砕。座標N35・W22――」
一方でハインラインはブラッディスライム出現を確認したエリアを報告した。クオレ機にスライムを撃破出来る火力が殆ど残っていない以上、位置を教え、あとは専用の装備を携
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