#10:バグ・ハンティング -混沌の狩場-

ック内の頭脳ユニット諸共ぶち抜き、燃料タンクをも貫通して大爆発を誘発した。バラバラに吹き飛んだ脚の一本一本が瓦礫やビルの天井に落ちていく。
 クオレはスティンガーに頻繁に乗っているわけではない。だが、ハンター仲間から、バレットライフのコアをブリューナクで一撃必殺可能になるのに必要なエネルギー充填率は聞いている。エネルギー充填に要する電力と、その間の出力低下に伴う機動性への影響を考慮した結果、140%程度で十分と言う結論がハンター達の間で言われるようになり、クオレもそれを踏襲したのだった。
 もしこれが、中量級コアCR-C89Eと中量級腕部A09-LEMUR2、中量級脚部LH07-DINGO2のオラクルであれば、エネルギー充填80%程度はあれば、コアを一発で撃ち抜けるレベルである。そのため中量級コアに中量級腕部と、同クラスのバレットライフも同程度のチャージであれば破壊できるとされていたが、4脚の特性である高エネルギー防御性能はこのACも例外ではないため、結局、余計にエネルギーを充填する必要があった。
 ちなみにブリューナク自体は、エネルギーを収束して発射するので充填率は100%を超える事が当たり前になっている。だがあまりに過度なエネルギー充填をすると、今度は砲身自体にダメージが及んだり、最悪エネルギーオーバーフローによる自爆を起こしかねない。そのため安全装置が設けられており、200%以上は充填しないよう、チャージリミッターが設けられている。それ以上のエネルギー充填も理論上は可能だが、安全性の観点から行うパイロットは極めて少数である。
 クオレもまた、安全性を考慮してブリューナクの酷使は避けていた。
「やれやれ、レイヴンとクソッタレのジなんとか位に留めときゃ、こんなマネなんざせんでも済んだものを……」
 そのクオレが、もう木っ端微塵にされたバレットライフに向けて毒づいている。
「今の時勢だったら、レイヴン専門のハンターとしてやっていけたろうに……クソッタレのド畜生女なんかと同列になりやがってよ! このクソッタレのマシンガン馬鹿が!!」
 世界各地でレイヴンの存在を認めない風潮が漂う現在なら、リム・ファイアーであれば多少は評価されていたかも知れなかった所だろうが、しかし機械生命体の一員――と言うよりは、憎んでやまぬジナイーダの同類になり、各地で破壊と殺戮を繰り広げている以上、同情などクオレにはなかった。彼にとって、ジナイーダとそれに関わるものは、否定されるべき存在であり、破壊による抹消を施す以外に何ら存在意義を見出せない。
 だがブリューナクの残り少ないエネルギーを酷使したのは確かであり、残りエネルギーはこの時点で14%にまで低下していた。
「クオレ、航空隊にインファシティへの出撃命令が出ました」
「おい、正気か!?」
 クオレは我が耳とハインラインの言葉を疑った。だが冷静に考え、自分とは頭の出来が、まともな方向に置いてまるで違うオペレーターが嘘や冗談を言うとは思えなかったため、疑いはすぐに上層部へ転じられた。
 クオレが知る限り、市街地に侵入したモンスター相手に航空機が出向く事は少ない。ACやACBと比較し、総じて足の遅い生物兵器とその成れの果てに対し、航空機はスピードが災いして市街地を飛行する事に激しく難がある。衝撃波で窓ガラスや看板が壊れ、街路樹や備品などが吹き飛ぶ事も珍しくはない。そのためビルの隙間に入られればお手上げ状態と言うのが実情で、無理に攻撃しようとして誤爆を起こすケースもしばしば見られる。
 ゆえに航空機がモンスター相
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まろやか投稿小説 Ver1.50