が、その凄まじい弾幕をまともに浴びれば、フォースフィールドでさえ、押し切るように突き破られてしまう程の火力がある。これがスティンガー等、機体そのものの防御が脆弱な機種にとっては致命的であった。
スティンガーは火力と機動性こそ高いが、半面防御はフォースフィールド頼みであり、それがなければAC搭載用のライフルやハンドガンにも簡単に破壊されてしまう程度の耐久性しかない。マシンガンの一斉射に晒されようものなら目も当てられぬ結果になる。
「殺してやる!」
「うるせぇんだよ、テメェは!!」
ファシネイターに一歩劣るとはいえ、24時間戦争時代にはすさまじい弾幕で畏怖された機体を前にしても、ハインラインが見ているクオレからはまったく畏怖が感じられない。
と言うのも、バレットライフの戦い方は、36年前と全く変わっていなかったのである。この辺はファシネイターと通じる所があるが、バレットライフの場合は機体重量が重い為、中空に浮かんでいる間は著しく機動性が落ちるという問題があった。
そして、ハインラインは勿論、クオレはその弱点を良く分かっていた。それが、オーバードブーストで再び距離を離し、機敏な切り返しで有効射程を外れた弾幕を逸らす様子に現れている。チャージ継続中のビーム砲に電力をとられてしまっているが、レーザーキャノンとレーザーブレードを欠かさず装備するグラッジパペットで慣れている手前、エネルギー兵器を抱えたままでのオーバードブーストや回避行動などクオレには朝飯前だった。
「ハインライン! エネルギーチャージが140%になったら教えてくれ!」
了解とだけ返すと、ハインラインは手元のコンソールを切り替え、クオレ機のステータス表示に切り替えた。破損状況や通信状態、残り燃料やブリューナクのエネルギーチャージ状態などの諸情報が、スティンガーのCGモデルに重なる形で表示される。
ブリューナクのエネルギー充填は、121%を示していた。
「あと10秒、と言った所でしょうか」
ブリューナクのチャージスピードを知っているハインラインなので、目標到達までの時間を推測するのは容易なことであった。それまでの間なら、幾ら血の気が多く激情家であるクオレでも、易々とは死なないだろう。
唯一気をつけるべきは、クオレのスティンガーには今、ブリューナクしか射撃武器がない事にあった。至近距離で連射の利かない収束モードのブリューナクと高速連射を可能とするマシンガン2丁が撃ち合えば、ダメージレースでクオレが撃ち負けるのは、ハインラインの目には明確であった。かと言って、近距離での射撃戦を得意とするバレットライフに対し、ハードフィストで殴りかかるのは愚の骨頂である。
とは言え、それが杞憂であった事はすぐに分かったのだが。
「充填140%です」
「よし!」
退き続けていたクオレ機が前進に転じた。
その間にもエネルギー充填率は徐々に増して行き、ロックオン可能範囲に到達したころには142%に達した。だがクオレはそこまで見ていない。彼が見ているのは、バレットライフの動きのみだ。
「殺してやる! 俺が今まで殺して来た奴らと同じように!!」
バレットライフが歓喜に咽ぶかのように、射程内に戻って来た獲物へと銃撃を見舞う。
「そりゃ――」
クオレはスティンガーを横飛びさせ、同時にファイアーボタンを押し込んだ。
「――テメェに言うセリフだ!!」
ブリューナクから一筋の強力なビームが迸り、バレットライフのコアに突き刺さった。収束された光の束は装甲をFCSやジェネレーター、更にはコックピットブロ
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