#10:バグ・ハンティング -混沌の狩場-

「ハインライン、補給の手配は出来るか?」
 向かってきた3匹のベルゼバブを連射モードのブリューナクで撃ち落し、クオレは尋ねた。
「可能です。ただし戻って来たイェーガー達でハンガーが塞がっています。若干時間を待たねばなりません」
 人員と機体がフル稼働状態じゃ仕方ないかとクオレが諦めた瞬間、バルカンが横から飛んで来た。ACのみならず各種ACBにも搭載されるフォースフィールドでダメージは抑えられたが、被弾してフィールドが一時的に弱くなった部分の装甲が破られる。
 そしてクオレは、ドラグーンフライが襲来して自分の周囲を目まぐるしく飛び回り出したのをレーダーで認識した。そして、先のバルカンの出所が彼等である事を即座に理解した。
「またか!」
 いい加減、クオレはうんざりしていた。高機動性ゆえにとにかく鬱陶しい上、量産機だけに何度撃墜しようともドラグーンフライはしつこく出て来る。
 憤懣やるかたない声と共に、拡散モードに切り替えたブリューナクが火を噴いた。翼を吹き飛ばされ、本体を損傷したドラグーンフライは煙を吹きながら高架道路の支柱に激突し、爆発。ぶつかられた支柱は揺らいだが、一部が削られただけでひび割れは起こさなかった。
「ベルゼバブといい、今のドラグーンフライと言い……何で俺はこううざったい連中にばっか当るんだ?」
「そこまでは分かりません」
 運が悪いとしか言えないとハインラインは思ったが、悪運を理由にケチつけられるのも好ましい事ではないと感じているので、押し黙る。
「しかし、撃墜してしまうのですから結局同じなのでは?」
 それもそうかとクオレは返すが、メインモニター端に表示されたエネルギー残量がオレンジ色に変色し、音を上げた。燃料切れではない、スティンガーもAC同様、コンデンサに蓄積されたエネルギーで行動の多くを賄っているが、そのエネルギー蓄積残量が少なくなっていたのだ。やむなくクオレはエネルギー回復のため、スティンガーを一時停止。ブリューナクへを一時的に停止状態にし、機体をアイドリングモードに切り替えた。
 スティンガーをはじめ、殆どのACBにはACのような独立したジェネレーターは搭載されていないが、戦闘機同様、エンジンに発電機――ACで言う所のジェネレーターが直結されているため、ACのようにブースト移動でエネルギーが消費される事はない。いや、消費はするが、ブリューナクやフォースフィールド発生装置、生命維持装置や各種電子機器の消費量を含めたとしても、パイロット――少なくともクオレの気にはならないレベルである。
 さらに、スティンガーはACよりも一回りは小柄かつ軽量なので、その分必要なエネルギーはACと比較すると少ない。武装こそ両手に搭載できるものに限定されているが、無駄な装備がないぶん、エネルギー効率もACと比較してかなり高い。データによると、非武装時のスティンガーのエネルギー消費量は、AC用旧式ジェネレーターCR-G69装備時で余剰出力4000台を叩き出すほどであった。これは並みの逆間接ACをも上回る省エネ性である。
 しかも、スティンガーは双発機であるため、同時に2つのエンジン内臓発電機を使える事になり、ACではしばしば起こりうるチャージング自体、滅多にない。少なくとも、ACで問題なくエネルギー管理が出来ているパイロットであれば、まずチャージングになど陥らない。バッテリーがある事を言い含め、エンジンが停止しても当面電力には困らないのである。
 事実、クオレのスティンガーは停止から4秒でコンデンサ容量を完全回復させていた。そうなればす
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