生物兵器出現の知らせをストリートエネミーから受けても、ブルーネージュとその作業員達は比較的落ち着きを保っていた。全く恐怖がないと言えば嘘になるが、しかしながら救出された生存者の様なパニックを起こさず、ある程度組織だった行動を行えたと言う点においては、間違いなかった。
事実、プレーアデスの周辺ではパワードスーツの作業員が管制パネルを操作してシャッターを開き、作業用MTとクレーンが付近の排水口に詰まったクモの死体や粗大ゴミ、ヘドロを取り除いていた。
彼等の周辺では、既に10匹近いクモが死んでいた。だが、ヘドロや汚物に塗れた様子がなく、緑色の体液を滴らせ、挙句一部の足が痙攣までさせている個体の有様は、この怪物がつい先程まで生きて活動していた事を物語っていた。
「ロックを解除した!」
パワードスーツの作業員の返答と同時に、モーターが唸りと共に回転し、重々しいシャッターを通路上へと引き込んだ。同時に、ブルーネージュの足を浸していた汚水が、急激にシャッターの向こう側へと引き込まれていく。排水口から撤去されたクモの死体を道連れにして。
ブルーネージュはすぐさま、目視射撃でその死体を粉砕した。原形を保ったまま流れては、また排水口に詰まると見なして。
もう一方のパワードスーツの作業員は、上流側の制御パネルに取り付いて作業していたものの、こちらはすぐにはゲートを開かなかった。
「排水溝の詰まりが取れるまで開けるなよ。俺達まで流されかねん」
クレーンでゴミを取り除いていく作業員に、分かっているとパワードスーツの作業員は返した。
クモの怪物を排除しながら下水溝のトラブル解決に当る中、ブルーネージュ一行は下水プールに辿り着き、此処のクモの死体が水位上昇の原因だろうと見て、早速その解消に乗り出した。
まずアストライアー達が正常に戻した下水による作業遅延を恐れ、一度上流側のシャッターを封鎖。同じに、閉鎖されていた下流側のパネルを制御し開放すると共に、排水口を詰めていた大量の化け物の死体の撤去を行う事としたのである。
プレーアデスは、安全な作業の為、現れたクモの撃破に専念していた。
「こいつらがパネルを操作したのか?」
「まさか。徘徊している最中、偶然触れてしまったと言う所だろう」
ブルーネージュは、クモみたいな外見の怪物に、機械を制御できるほどの知性があるわけがないと断言した上で、本来閉鎖されているはずのない下流側シャッターが閉じられていた原因がクモ達にあると見なしていた。
「だとしたら、何故制御室からのコントロールを受け付けなかったのかが気になるが……」
疑問は出し抜けに現れたクモによって途切れさせられた。すぐさまプレーアデスは投擲銃を発砲、クモを一撃の下に木っ端微塵にしてのけた。
「ああ、多分コレだ」
下流側ゲートのパネルに陣取ったパワードスーツの作業員が、ライトでパネル上の壁を照らしていた。恐らくクモの足の爪に引っ掛かったか何かしたのだろう、ケーブルが寸断されている。彼はこれのおかげで、管制室からの制御が出来なくなったのだろうと推測した。
「修理出来るのか?」
ブルーネージュの問いに、作業員は頭を振った。
「駄目だ。手持ちがない」
「事が済み次第、図面と機材を持って修理担当を送るよ」
ただし、それには下水道内に徘徊している化け物を駆除しなければならないと言う前提があると、主任は加えて伝えた。
「よし、排水溝の詰まりは取り除いた! これで行ける筈だ」
あとはシャッターを開いて、ダブルトリガーが待機している地点まで正常に流れるようなら
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4 5 6..
18]
[7]
TOP [9]
目次