#10:バグ・ハンティング

が、クオレ機の右腕を掠め飛んだ。
 クオレもすかさず反撃する。ビームはアサシンバグを捕らえ、翅をもいだものの本体にはさしたるダメージにならなかった。硬質化した外骨格が散弾に耐えたのだ。
 だがクオレは動じない。飛行能力を奪われ、地を這いながら近付いてきたアサシンバグが火炎弾を吐くと、横跳びで回避しながら粒子砲を収束モードに切り替え、反撃する。
 今度のブリューナクからは太く長いビームが発射され、この光線に直撃さけた巨大蜂は頭を胸部諸共貫かれ、動きを止めた。
 もう大丈夫だろうとクオレが機を旋回させたとき、背後の瓦礫が土煙と崩落音を上げた。咄嗟に機を振り返らせると、ハインラインはいないと次げたはずのファシネイターが現れていた。だが両腕と頭と背部武器が失われ、ボロボロとなったコアが今にも脚部から千切れそうにグラグラ揺れていた。しかも、足取りもおぼつかない。
 当然黙っているクオレではない。本能的憎悪と生理的嫌悪感に突き動かされ、即座にブリューナクを向ける。
「そのゴミナントには構うな! モンスター達の駆除を優先して下さい!」
 ハインラインにしては珍しい、怒鳴るような口調にクオレはたじろいだが、やはり筆舌に尽くせぬ恨みを抱く相手が前である、腹の虫が収まるはずがなかった。結局彼は発砲せず、左腕で打撃を食らわすにとどめる。
 スティンガーはACと違い、レーザーブレードは搭載されていないが、代わりにハードフィストと俗称される、先端部が針状になった超硬質の特殊合金製シャフトが付いた打撃用近接武器が標準装備されている。その威力は、油圧ピストンによって繰り出されるパワーも相まって、やわな装甲なら金属シャフトは貫通してしまうほどである。
 AC搭載用の射突型ブレードと酷似しているが、射突型ブレードは特徴である金属杭を突出させる際に用いる火薬が切れれば使用不能となるのに対し、ハードフィストは機体のエネルギーが尽きるか、機構自体が破壊・故障しない限りはいくらでも使う事が出来る点に置いて差異がある。
 その金属杭を受け入れたファシネイターはコア装甲をぶち破られ、後ろに倒れて動きを止めた。クオレ機はその残骸を踏み潰し、新たに闖入して来たベルゼバブを撃ち落とし、ヴァンパイア3匹を粉砕すると、新たな獲物を探して徘徊を始めた。同じモンスター掃討の依頼を受けたと見られるスティンガー4機が、同じ荷電粒子砲やガトリングガンを携えてクオレ機の右手をすれ違った。
「北地区にモンスターが大量出現しているとの報告です」
 ハンター達が援護を要請しているとハインラインが言うので、クオレは了解して北に転進した。
 そのまま数分間、スティンガーを進ませるクオレはモンスターと遭遇せず、同業者のスティンガーやサイクロプス、アーマード・カファール、プロキシマ等がすれ違い、時に横切るのを見送るのみだった。ハンターやイェーガーの兵器は単独やペア、或いはトリオ、もしくは大小の集団で市街地をうろつき、モンスター退治に当っていた。
 更に進むと、被災した市民の救出作業に回っているイェーガーの姿が見受けられた。重機やサイクロプス、スティンガーが瓦礫を撤去し、生き埋めにされていた市民を発見し次第、レスキュー隊員が救出・担架に載せて救急車や救助ヘリ、兵員輸送用の装甲車等で搬送させている。
「早く救出しないとモンスターが来るぞ!」
「サイクロプスと武装ゴキブリを盾にしてモンスターの侵入を防げ! そこのハンターも手伝ってくれ!」
 自分が呼び止められたと察して、クオレも他のスティンガーと同様、武器を構えて周辺のモンスター警
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まろやか投稿小説 Ver1.50