#10:バグ・ハンティング

。クオレの記憶では、ハンター達からフライペーパーと呼ばれる生物だった。これは一切の攻撃手段を持たない生命体で、モンスターの餌とするため生成された、歪んだ生態系においては下位の捕食生物だった。
 だが、クオレはその生命体を無視して進んだ。放置しておくと戦闘――この場合はハンティングの邪魔になる可能性があったので撃墜しても良い所だったが、こいつ等はそのリボンの様な触手が、名前の「ハエ取り紙」のように粘性を帯びており、これでハエなどの飛行昆虫を、まるで水棲生物がプランクトンを食べるように餌食とするので、市街地に湧いているハエの駆除ぐらいには役に立つだろうと見たのだ。
 そして何より、それ以上に危険な存在の姿をクオレは認めていたのだ。成人サイズかそれ以上の巨体を持つノミと言う特徴から、ヴァンパイアだと分かる虫が、眼前を徘徊していた。クオレは間髪入れずに拡散ビームを繰り出し、巨大なノミを次々に餌食にした。
 その最中、ヴァンパイアの1匹が、横から跳びかかられた巨大な蜂の様な怪物に襲い掛かられた。クオレの目の前で、そいつはヴァンパイアに間髪居れずに毒針を打ち込み、動けなくなった獲物をさらって行った。
「ああくそ、アサシンバグまで来てたのかよ……」
 クオレは頭を抱えながらもショットガンを向けたが、刹那、バルカンの雨霰が降り注いだ。直後には、複葉機の様な姿の機械が彼の真上を過ぎる。
 クオレには見慣れたドラグーンフライである。
 だが今回は1機だけで、数日前のようにチームを組んでいる様子はなかった。バルカンで多少撃たれたが、すぐさま回避行動に出る。
 スティンガーは機動性重視のACBだけに装甲が薄く、防御面はもっぱらフォースフィールド頼みである。しかも、フォースフィールドは一度ダメージを受けると、回復するまでは機体が無防備になる。ダメージを受け過ぎれば回復さえしなくなる危険もあるため、回避行動を怠ってはならないのである。
 幸い、スティンガーの速力や機動性はグラッジパペットよりも高く、バルカンの雨霰を回避するのは容易だった。
 無論、ドラグーンフライが厄介者である事は思い知っているクオレなので、彼等を好き勝手にのさばらせる心算はない。すぐに拡散ビームで迎撃する。最初の射撃は直撃せず、足を破壊しただけだったが、第2射は幸運にも翼と後部ユニットを吹き飛ばし、眼前へと叩き落とした。
 その隙に、アサシンバグは獲物を抱えて飛び立ち、その場から逃げ去っていた。クオレが気が付いた時には、既に蜂の化け物の姿はなかった。
 クオレは敵の残骸を越え、スティンガーをさらに進ませる。ついでに、瓦礫に止まっていたベルゼバブ3匹へと立て続けにビームを食らわせ、撃ち落した。
 直後、機体が炎に包まれ、コックピット内の温度が急上昇。額に汗が浮かび上がる汗を拭ったクオレは、即座に火炎攻撃の犯人であるアサシンバグに粒子砲を向けた。この怪物は巨大なスズメバチの様な姿をしているが、外骨格は黒と黄色の警戒色ではなく灰褐色をしている上、足は刺だらけ、眼は真紅と禍々しい雰囲気を放っている。まるで巨大な羽蟻が飛んでいるかのようだが、頭部はカマキリのようで、前足までもがカマキリのそれに似た凶器に変化している。
 そして、この剣呑な怪物は、普段は他のモンスターを主食としているものの、時として人間も餌食とする事が知られている。
 しかも、そのアサシンバグは口から火炎弾を吐き出し、クオレ機を狙って来た。荒野で遭遇したベルゼバブ達も使ってきたもので、原理も全く同じだ。酸素に反応して激しく燃焼する物質で構成されたそれ
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