#10:バグ・ハンティング

が完了すると、クオレは先行する別のスティンガーとサイクロプス2機の後を追うように、地上に通じるトンネルを急ぎ駆け上がった。
 まだ陽の高くない朝の空の下を、クオレはインファシティへと進行方向を転じながら、ブースターを吹かし、マニピュレーターを回転させ、腕と粒子砲を振るう。基地を飛び出した頃には、クオレは操縦の感覚を取り戻したと見え、満足げに頷いていた。
「ハインライン、今回の敵は? またRKの相手しねぇといけないのか?」
 まだ敵の詳細を知らされていないことを思い出し、クオレは訊ねた。
「モンスターが来たって言ってたのに、機械生命体が飛んでるじゃないかよ」
 もう勘弁してくれと言わんばかりにクオレが呻いた。彼の遥か前方、黒い煙を吐いているビルのすぐそばをソラックスが浮遊し、ドラグーンフライがスカイシミターに追い立てられている。
「ご安心を、今回はレイヴンキラーの姿はありません。ついでにファシナニヤラが襲ってくる事はないと思われます。一応4機確認されましたが、即座に叩き潰されています。他では、ソラックスやバルバトスなど、量産型機械兵が徘徊していますが、殆どが単体ないし数体での行動で、組織的な攻撃はないとの事です」
「はぐれ連中か、何らかの理由で制御下を離れた奴等だろうか?」
「恐らくはそうでしょう」
 ハインラインが返している間に、クオレを感知したのだろう、ソラックス2機が接近し、プラズマキャノンをいきなり発砲しかかったが、彼は立ち直ったばかりの人間とは思えぬほど素早く反応した。粒子砲を拡散モードに切り替えて発砲した。エネルギーショットガンを思わせる青緑色の光条が迸り、ソラックス2機はただちに撃墜された。
「……何で本格的な襲撃を掛けて来ねぇんだ? 今ならインファシティを落とすチャンスだろうに」
 クオレが言うまでもなく、今のインファシティ周辺の情勢は緊迫していた。機械生命体の襲来で、かなりの数のハンターやイェーガーが落命している上、機体の消耗も激しい。予備機はまだあるため、クオレみたいにパーツではなく機体を交換して再び戦列へ、という者がおり、それで何とか戦列は維持出来ているが、ハンターやイェーガーも人間、連続での襲撃によって消耗が嵩んでおり、そこを突かれて落命する事は容易に想像出来た。
「実際、機械生命体群は既にジュイファシティ西から、インファシティ目掛けて進軍しています」
「もう来てたのかよ?」
「はい。ですが今回は人類側の反応が早く、政府側のMT・ACB・戦車・戦闘機部隊等がジュイファシティ・インファシティ境界の西40キロ地点に展開、突入を阻止しています。さらに、地元のハンター側も迎撃に参加しています」
 ノー・スモーキング隊の面々も恐らくは動いているだろうとハインラインは伝えたが、それについて、クオレは特に訊かなかった。
「いずれにせよ、インファシティ攻撃には動いたようですが……」
「じゃあこいつ等は何処から湧いて来たんだ?」
 新たにバルバトス2機を至近距離からの拡散ビーム直撃で打ち倒してから、クオレは訊ねた。ビームを喰らったが、足の装甲を僅かに掠められた程度で、作戦行動に支障はない。
「政府軍と交戦している連中の同類か?」
「いいえ、インファシティ西に接近したものとは別の集団です。識別信号を発していません」
 蟻や蜂が匂いで同じ巣の仲間か否かを見分けているのと同様、機械生命体は識別信号によって、同じ拠点に属する仲間かどうかを判断している。識別信号を発する機能がない個体は、殆どの場合は識別信号を発せられるよう修理に回されるが、時折制御下を
[2]前へ|[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4 5 6..12]
[7]TOP [9]目次

まろやか投稿小説 Ver1.50