は!? 俺のACはどうなってんだ!?」
顔色を変えたクオレはすかさずハンガーへと駆け込んだ。ハンガーが巨大な上、車を使わない移動なので相当な距離の移動となったが、サイボーグであるクオレにはそれ程苦ではなかった。
記憶を頼りにハンガーへ辿り着くと、そこには確かにグラッジパペットが係留されていた。頭部MHD-MX/QUEEN、コアMCL-SS/RAY、腕部MAL-RE/REXと上半身はお馴染みのものだ。だが下半身はない上、右腕はこれまた肘より下がなくなっている。コアも幾つかのパーツが損傷したままであり、いくつかはまだ取り外されている状態だった。いわゆる「装備不完全」の状態にある事は明確である。おまけにコアは前面がひしゃげていた。
これでは戦うどころか、出撃さえ出来ない。
その間にも、ハインラインは無表情のまま携帯端末を開き、チェインから送られたメールを無表情で見やっていた。周辺に姿こそないが、今頃は他のオペレーターたちもこのメールを受け取っている。そして、それは担当しているハンターやイェーガーを出撃させるようにとの主旨が記されていた。
当然、チェインのオペレーターとしての仕事に忠実なハインラインは即座に発した。
「クオレ、インファシティに侵入したモンスター撃滅への出撃要請です。機械生命体迎撃に戦力を割いている為、機体と人員が不足。動ける者は錬度を問わず出動せよ、との事です」
「僕は無理です……」
アルジャーノンが呟いた。依頼で受けたダメージがまだ残っており、しかもポットベリーがやられていて、出撃できる状態ではなかったのだ。
「アルジャーノンは仕方ありません。ですがクオレ、見た所無事な君には出て頂きます」
「そりゃ出撃すべきだとは思ってんだが……」
追いついてきたハインライン達に振り返り、クオレは装備不完全な愛機を指差した。
「このザマでどうしろってんだよ!?」
「チェインの兵站局に頼んでスティンガーでも貸して貰って来て下さい」
クオレはかぶりを振った。確かにACパイロットとなる前はスティンガーなどのACBを動かしていたし、ACBはインターフェイスの面でACとの共通点があり、機種によってはACのコアを丸ごと採用している事から、コックピットもACそのままと言う機種もある。
そして、そのときの経験はまだ失われていないため、クオレにもACBの操縦が可能である。ただ、コア規格を廃したACBよりも、自分の愛機を組めると言う点でACに魅力を見出しているだけで。
だが、今回はそんな事に拘っている状況でもない。
「ただ、まだスティンガーあるのか?」
今度はハインラインが頷いた。
「スティンガーなどMTやACBの類は予備機・予備パーツがまだありますが、パイロットの数が足りていないとの事です」
「まったく、都合のいい話だぜ」
クオレは悪態もそこそこに、出撃出来ないことを既に知っていたアルジャーノンを置いて、何か機体を借りようと兵站局へと向かった。
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