#09:嵐の前

造品――22名は全員撃破し、大抵の機械生命体を相手取れるスキルは備えている。だが、ドラグーンフライは苦手としている上、レイヴンキラー相手に至っては未だに一度も撃破スコアを出した事がない。これまで彼は、先の襲撃も含め7回レイヴンキラーに遭遇しているものの、今回を含め2度撃破されている。それ以外は、あわやと言う所で僚機のスティンガーや、カリバーン隊の面々をはじめとする戦闘機部隊に助けられて来た。
 出来るならこの忌々しい相手にリベンジを仕掛けたいクオレだが、レイヴンキラーはACで撃破するなど絶望的な相手である。多くのACパイロットがそうであるように、クオレもまた、ACと比較して火力も機動力も上であるレイヴンキラーを相手にし、ACの限界を思い知らされていたのだった。
 アニマドは石を削り出したような無表情であったが、その中ではクオレの心情に理解を示している心算でいた。元々火力・装甲の両面でAC以上の性能を有しているとされながらも、ACから発展したACBタイタスのパイロットである為、レイヴンキラーの脅威も身を持って思い知っている。
 と言うのも、アニマドもかつてレイヴンキラーに撃破されていたからだ。レイヴンキラーの厄介さは身を以って思い知っている上、何よりクオレはACパイロットである立場上、レイヴンキラーに対するロクな対抗策を持てないのが実情であり、その絶望感たるは彼が察するに余る所だった。
 だが、それと共にジナイーダに対する憎悪も相変わらず募らせていた。デヴァステイターに魂を売り渡し、倒しても倒しても幾らでも湧いて出て来る人間崩れの外道の事を考える度に虫酸が走った。ましてや今のジナイーダは、レイヴンキラーと言う忌まわしい存在の同類なのである。レイヴンキラー共々、彼女とその搭乗機を、いつか一つ残らず殲滅してやると、彼は無言のうちに百回も誓っていた。
「ただ、悪い事ばかりではありません」
 ハインラインがハンガーに目をやる。
 ハンガー周辺では、スティンガーやプロキシマ等各種ACBが展開されており、今また輸送機から降りてきた別のスティンガーがハンガーへと通されていた。ハンガー内には、クオレにはあまり馴染みのないMTやACB、あまり見かけないアセンブリをしたACの姿も見受けられる。そのいずれも、数日前まではハンガーに居なかったものである。明らかに外部から来た面々の搭乗機だと分かった。
 さらに、滑走路脇に留まった輸送機のカーゴが開放され、搭載されていた戦車やMTが続々と下ろされていた。翼を広げたトウゾクカモメと鎖の紋章――イェーガーズチェインの公式エンブレムが見られた所から、すぐに同業者達だと分かった。
「周辺地域からハンターやイェーガーが集結しています。イースト・バビロン列島より渡って来たイェーガーも少なくはありません」
 中にはハンター組織丸ごと1つが遠征するケースまであったとハインラインは伝えた。だが、クオレの眼中はそこにはない。
 何故ならクオレの視界には、集結したハンター達の機体と共に、基地敷地内の西に幾つも建てられたテントや建設途中のバラック、仮設住宅の類が目に付いていたのだ。その周辺に集まっていたのは、インファシティを追われてきた避難民達だ。そして、そこは以前にACに乗っていた少年少女レイヴン達が集められていた場所でもあった。
 その中には、炊き出しに並んでいたツインテールの茶髪をした少女の姿もあった。以前、クオレが説得の末に武装解除に成功した、あの少女パイロットだ。まだ、家族に会えないままチェイン基地内に押し込められていたのかと分かっ
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まろやか投稿小説 Ver1.50