#08:敗残者

、灰色の頭髪をした少年と、スーツに身を包んだ役者の様な男性、そしてパイロットスーツ姿の男が並んでいた。このうち、スーツ姿の男性は、白衣の男の片割れ、年長者と分かる日系の男性には見覚えがあった。
「ドクター・ナギダ、彼の様子は……」
「処置は完了しました。義手義足も新しいものに交換し終え、損傷したボディ各所も修復は完了しています」
 ハインラインからナギダと呼ばれた男が説明を行う。
「あとは彼が意識を取り戻せるか、そして義手義足が彼の神経と無事にリンク成功して動くかどうか……それさえ解決すれば問題はないでしょう」
 いや、とナギダは発言を訂正した。
「ただ、また似たような有様で私の元に帰って来るのかと考えると……」
「帰って来る?」
 アルジャーノンは言葉のニュアンスに違和感を感じた。搬送されるなら兎も角、何故帰ってくるという表現を使ったのかが、彼の気に掛かった。ナギダも少年の疑問を察してか、口を開いた。
「……私が彼を」
「サイボーグにしてしまったんだそうだ」
 アニマドがすぐに補足した。
「何と……」
 それでアニマドが「戻って来た」と言ったのかとアルジャーノンは納得したが、クオレがナギダによって強化人間となった事は、彼には初耳であった。
「……アニマドさんは知ってたんですか?」
 尋ねられたハンターは頷いた。
「処置せずに越した事はないのですが、初めて見た時の彼――当時17歳でしたが、その時は身体が滅茶苦茶に損傷していて、処置しなければ助からない有様だったので……」
 その為、人命を助けると言う観点から、やむを得ず処置を施したとナギダは語った。
 その間にもクオレはベッドで呻き続けている。しかも呻きながら「くそったれ」だの「このド畜生」だの、挙句に「死ね」「殺してやる」だのと悪態をついている。
「ジナイーダに苦しめられているのでしょうか……?」
「あるいは夢の中でもジナイーダと戦い続けているか……」
 アルジャーノンとハインラインが、クオレを覗き込んで呟き合った。同じ境遇上気持ちは分るとアニマドは小さく頷き、そっと呟いた。
「と言うか、ドクター……こんなに激しくなるものなのか?」
「こちら側で埋め込んだ補助用の電子頭脳の作用ですね。仮に脳がその働きを鈍らせても、電子頭脳が機能しているので、身体がその人の動作を補助しているのです」
 アニマドの質問に答える一方で、ナギダは顔をしかめた。
「普通は本人の意識がなくなると電子頭脳は休止するのですが、たまにこのようにして、本人が意識を失っても、その人がよく行う行動を取るケースが見られます。特にクオレは身体の75%を機械化しているので、その事もあるのでしょう」
「電子頭脳も学習している、と言う事か……初対面じゃない俺が言うのも何だが、随分と手の込んだ強化人間を手掛ける科学者も居たもんだ」
 アニマドが呟く。彼は全く別の科学者が手掛けた強化人間である為、補助用電子頭脳は内蔵されていない。そもそも、アニマドは身体をナノマシンで強化したタイプの強化人間であり、クオレの様に身体を機械したサイボーグの類ではない。
「そんな事より、クオレさんがああなっている事に対して推測するだけですか?」
 アルジャーノンの指摘に、ナギダは再び顔をしかめる。
「如何ながら、補助用電子頭脳もまだ完全ではないのです。まだ、問題点を改良し続けている段階でして……」
「クオレさんはモルモットですか!?」
 アルジャーノンがヒステリックに叫んだ。元々彼はジナイーダやダイ=アモン等、歴史上で悪名高いレイヴン達が処置の末に人格破綻者となっ
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まろやか投稿小説 Ver1.50