#07:レイヴンキラー

ジン音とハインラインからの通信によって、フォーミュラーは言葉を不意に途切れさせた。ついで、4機に巨大な影が落ちた。4人が頭上を見やると、巨大な鉄の翼が現れていた事に気がついた。
 見慣れた輸送機ではない。クラトランスと呼ばれたその翼には可動式のエンジンポッドが搭載され、更に翼からもジェット噴流を出して低空飛行している。さっきの炸裂音や爆発音、エンジン音の発生源だろうとフォーミュラーは見なした。
「撃ち落せ!」
 クオレは叫ぶや、レーザーキャノンを即座に発砲した。このクラトランスは嘗て人類側の大型爆撃機だったものを機械軍団が乗っ取って独自に改造したものであり、爆撃機本来としての機能は勿論、輸送機としての役目も備えるようになったものである。
 そして、そのカーゴルーム内には爆弾の他に機械兵が満載されている場合すらある。事実、クオレたちを察知したクラトランスはカーゴ下部を開いて爆弾を次々に投下して来た。しかも、その爆弾は羽根を可動させる事により、ある程度の誘導性も備えている剣呑な代物だった。
「走れ!」
 クオレは攻撃を中止し、即座にブーストダッシュに転じた。フォーミュラーもそうした。重武装ゆえ避けられないと判断したアルジャーノンとジオストラは路地に逃げ込む。直後、グラッジパペットの背後が盛大に連鎖爆発し、自家用車・街路樹・道路・建造物などを無差別に粉砕した。クラトランス――クラッシング・トランスポート、即ち破壊輸送機を意味する略語で呼ばれる所以である。
 それでも、グラッジパペットとザルトホックXVは何とか爆発から逃れた。ポットベリーとターボクロックも直後にビルの屋上へと上昇して来た所からすると被害はないようだった。
 ハンター達を仕留め損なったと判断したクラトランスは今度はミサイルを繰り出した。グラッジパペットが回避行動に出た直後、後部ハッチを開放し、機械兵ガロン6機を一度に投下出撃させた。クオレは円盤型の上半身にパルスガンの他、今回はガトリングガンを携えたバージョンも見てとった。
 そのガロンは、出撃早々にハンター達目掛けてガトリングガンとパルスガンのラッシュを繰り出した。だがクオレはそれでもクラトランスをレーザーキャノンで狙い撃ちした。ターボクロックのミサイルがそれに加わり、右主翼のエンジンを破壊する事に成功。クラトランスは火と黒煙を噴きながら高度を落とし始めた。しかし、機体は傾かない。
「自動着陸装置が作動したかッ……」
 フォーミュラーがガロンを相手取りながらうめいた。元爆撃機とは言え、輸送機としての運用も可能なクラトランスは、輸送機に求められる能力である「積荷を安全に運ぶ」こともクリアしている。自動着陸装置もその為に装備されたものだ。
 中身を無事に下ろされるとどうなるか、たまったものではないと判断したジオストラは落ち行く破壊輸送機へと更にミサイル攻撃を加え、遂に左主翼を完全に砕く事に成功した。
 だが、敵もただでは墜落しなかった。
 墜落する寸前、クラトランスはカーゴを開放、積載されていたガロン12機ともう1機種、複葉機を思わせる、「ドラグーンフライ」のコードネームで呼ばれる空戦型高機動機械兵6機を出撃させた。
 ドラグーンフライの武器はバルカンぐらいしかないものの、2機のメインエンジンの他に、トンボの腹部を思わせるリアユニットに10の噴射ノズルを備えており、運動性が異常な事で知られていた。
「一端逃げろ!」
 ハンター達は急いで後退に転じた。だが、18機を数えるガロンが執拗に追いすがり、その頭上には6機のドラグーンフライが滞空し、バル
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まろやか投稿小説 Ver1.50