#07:レイヴンキラー

ラインは釘を刺した。
「他のハンターを狙っている場合は破壊しても良いでしょうが、攻撃が外れた場合、生命の保証は出来ません」
「了解しました」
 同じ通信を受けていたアルジャーノンから返事が返る。
「分かった。気を付けていかないとな」
 もう何度も見ているし知っているんだけどと思っていたクオレだが、やはりその辺は言わない事にした。
「また、少数ながらステルス迷彩を装備した敵機や、エネルギー兵器の通じない敵機まで居るとの報告もあります。その点にも警戒願います」
「厄介だな……」
 呟きながら、クオレはグラッジパペットをハンガーから切り離した。任務開始前から頭の痛くなる事ばかりだが、逃げるわけにもいかなかった。
 と言うより、クオレには逃げると言う思考がなかった。此処で戦いを放棄すれば、それはインファシティの危機ばかりか、自身の立場すら危うくする事になる。それに、この間開放し、今もイェーガーズチェイン・インファシティ支部の保護下にある孤児たちを見殺しにする事にもなりかねない。
 若きハンターは呪詛にも誓い己への内なる言葉で、自身を戦場へと強引に引き止めた。俺が戦わなかったばっかりに、あの少年少女達を機械生命体達に狩らせるようなマネはさせねぇ!
 すぐにでも飛び出したい所だったが、そこでクオレは冷静に戻った。そして外部音声システムをオンにする。
「グラッジパペット出撃――したいがそこの関係者の皆様方、出撃の邪魔だからどけー!」
 タンクローリーと作業員数名が前を横切っていたので、クオレは外部スピーカーの音量を大にして注意を促した。若い整備士からは「言われなくても分かるわバカヤロー!」などと悪態も帰って来たが、クオレには聞こえなかった。
「クオレさん、急いでください!」
「そうしたいんだけどよ、作業員のおっさんやあんちゃんを轢いちまったらマズイだろ?」
 律儀にもクオレは、作業員の安全を頭のうちから外していなかった。緊急時なのだからもっと急いでくれとアルジャーノンは苛立ったが、関係なかった。
 これはルーキーハンター時代、クオレは敵襲来を聞いてグラッジパペットを急発進させた結果、風圧と衝撃波で女性オペレーター1名、整備士11名を転倒させて怪我させた過去の苦い失敗を繰り返すまいとしている為である。
 アルジャーノンもそれ位気遣っても良いだろうにとクオレは思ったのだが、やっと進路上から人が消えたので、まずはガレージからACを外に出した。
「待たせた! 急ごう!」
 クオレはオーバードブーストを起動し、機械生命体対峙の為にインファシティへと駆け出した。ポットベリーもオーバードブーストで後に続くが、機体重量の差から大きく水を開けられてしまった。
「アニマド、ジオストラ、フォーミュラーやノー・スモーキング隊などは既に交戦状態です。物量差を考えると、あまり無理はさせられません」
「分かった。援護を急ぐ!」
 その直後、パルスビームがグラッジパペットの横から飛来し、右腕を僅かに焼いた。
「来たな……」
 クオレが即座に愛機を反転させると、見慣れたソラックスの団体が迫って来ていた。直ちにバックブーストをかけながらマシンガンを乱射し、叩き落としに掛かる。
 今回はジナイーダ相手の時の様な暴言は飛び出さない。物量の観点から、相手がジナイーダの比ではないほどに厄介な存在である事を身を持って思い知っている為、必然的に冷静にならざるを得ないのである。
 と言うより、ハインラインの話を信じていいならばの話だが、今回は憎んで止まぬジナイーダとその搭乗機は1機も姿がない。居るのは若干のA
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まろやか投稿小説 Ver1.50