#07:レイヴンキラー

ーの背後に回った。
「うわっ、やめろ!」
 急いで旋回し、その場から逃れようとしたが、無駄な足掻きでしかなった。レイヴンキラーのプラズマレールキャノンはポットベリーの背後を捉え、機能停止していたブースターとオーバードブーストを一撃の下に完全破壊。爆発に見舞われ、アルジャーノンはその意識を霧散させた。
 ジェネレーターにまで損傷を受けたポットベリーも倒れた。
 ACを叩きのめすと、レイヴンキラーはドラグーンフライ4機を従え、更なる獲物を求めて飛び去った。生き残っていた緑色のスティンガーとアーマード・カファール隊が追撃するが、時速1200キロにまで一気に加速した事で、あっさり振り切られた。


「やられたか……」
 ハインラインは俯いて肩を落とした。
「生命反応があるのは不幸中の幸いですが……」
 画面を切り替え、アルジャーノンとポットベリーのコンディションを表示すると、ポットベリーは戦闘不能表示が出ていたが、アルジャーノンには心拍数と脳波レベル低下が見られたものの、危険域まで低下している様子はなかった。後方を破壊されたとは言え、重装甲とフォースフィールドは確かに少年の命を救ったのだと分かった。
「だめか……」
「応答して下さい!」
 他のオペレーターからも良い反応は返って来ない。いずれも、担当ハンターやイェーガーがACに乗っている者たちばかりである。
「交戦した所で勝てるわけが無いんですから逃げて下さい!」
 ハインラインの後ろの席にいる女性オペレーターも、レイヴンキラーに遭遇したら最期だと危険性を訴え、担当ハンターに離脱を促している。
「レイヴンキラーとドラグーンフライが追加投入された!」
「全員、ACを戦場から下がらせろ!」
「全ACはただちに撤退せよ!」
 ダビッドソン少佐以下、チェインの将校達が怒鳴った。
「後は航空部隊に全てを任せるしかなさそうですね……」
 ハインラインは目を伏せた。担当ハンターが2人ともやられた今、彼に打つ手はなかった。
 その間にも、レイヴンキラーは行く先々でACを見つけては片っ端から撃破していた。何機かリニアガンやレールガン等で撃墜される機を出し、スティンガー等のACよりも小柄で、より敏捷な有人兵器相手にはプラズマレールキャノンの的が絞れないなどの理由で不覚を取る事こそあったものの、ACが全滅させられるのにはそれ程時間を要さなかった。
 だからこそ、この兵器は「ACでは勝てない」と、ACパイロット達の誰からも恐れられていたのだ。ハインラインが知る限り、ACを駆るレイヴンで、レイヴンキラーと正面から対峙して生還した者は殆どいない。理由はその、ACでは決して及ばぬ圧倒的火力と機動力、そしてそれ故につけられた名前にあった。
 レイヴンキラー1機のためにアリーナランカー30名が皆殺しにされたり、両手の指の数を投入された結果、レイヴン斡旋組織が丸ごと壊滅させられたケースさえある。そうしてレイヴン達を一方的に屠り続けた事で、この凄まじい殺戮振りを有する機動兵器は、いつしか“レイヴンを殺す者”と、誰ともなしに呼ばれるようになったのである。
 企業戦力やハンター組織も例外ではなく、誰かを狙っている隙を突いて倒した場合は兎も角、ACを駆るハンターやイェーガーでさえ、レイヴンキラーとまともに戦えた者はいない。例えそれがアリーナのトップランカーだったとしても、ACを操っている以上、敗北は確定であった。
 だが、ACに対してほぼ無敵の存在であるレイヴンキラーにとってさえ、強敵と言える者達もまた、この戦場には存在していた。


「逃がすか!
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