#06:クオレの人となり

落と共にドミナントが使われなくなる一方、ハンターやイェーガー達が台頭してくるに従って「高次・優位・上位」を意味するスペリオール(Superior)と言う単語が、腕利きのハンターやイェーガー達に対して使われるようになっていた。一方、イレギュラーは現在、そのスペリオールをも凌ぐ、常人離れした腕前を持つパイロットに対して用いられるようになっていた。この点は、レイヴンが戦場の主役だった頃と、それ程大きな違いはない。
 最もスペリオール自体、ドミナントの類義語なのだが。
「クオレさんはスペリオール……じゃないですよね、やっぱり」
「当然です。スペリオールはランクSのパイロットに与えられる称号ですけど、クオレはハンターランクBマイナスですから。残念ですが、スペリオールの資格はありません。最もそれは本人が一番分かっている事かも知れませんが……」
 都市部で戦うと、ジナイーダ憎さの有無に関わらず、マシンガンを必要以上にばら撒いてしまい、周辺に被害を与える事が多かった事をハインラインは指摘した。更に、誤射を恐れて中々発砲出来ない事があり、クオレはそれで悩んでいた時期があったとも打ち明ける。
 そして、それは今も引き摺っているんだなとアルジャーノンは察した。事実、ファシネイターが病院を襲撃するまで、クオレは誤射を恐れて発砲を躊躇していたのだ。
「そう言えば……」
 ジオストラが会話に加わって来た。
「彼と仕事をするようになって2年ぐらいになるけど、確かにそんな所があった」
「と言うと?」
「何と言いますかね……」
 アルジャーノンの視線の先で、ジオストラは腕を組んだ。
「まあ自称ドミナントに対しては偏執狂の暴言大王もいい所みたいな感じなんですが、女子供が絡むと冷徹になり切れない所がある様に感じるんですよ。先のレイヴン襲撃がその良い例かと」
「成る程」
 ハインラインは頷いた。
「それに、クオレは去年も女性レイヴンを取り逃がしてましたから」
 ジオストラによると、大破壊前において新大陸と呼ばれ、今はアースガルズと名を改めた大陸の東海岸に位置する都市・アリスフォートにおける依頼で「病気の家族を養う為にどうしてもしなければならなかったんです」として、報酬目当てでモノレールを爆破しようとした少女レイヴンを撃破しようとした事があった。
 ジオストラは彼女が仕掛けた爆弾を全て撤去し、その少女レイヴンを始末する段になったが、クオレは「あんたのせいで子供を失う親や、孤児達が増えちまう事になるぞ」と切り出し、「あんたも家族を殺されてみろ!」と諌めた事で、少女レイヴンは号泣、泣きまくった後に、「もう2度とこんな事はしない」とクオレに約束し、クオレもそんな彼女を見逃した。
 後にクオレはイェーガーズチェインに呼び出され、上層部の顰蹙(ひんしゅく)と同業者達の失笑を買ったとジオストラは付け加えた。
 因みにジオストラは、あくまでも爆弾解除の為に付いて行き、非武装だった事もあってか少女レイヴンを逃した事に対するお咎めは無かった。
「……口汚く罵りながらジナイーダを叩き潰していた人間のする事とは思えないですね」
 アルジャーノンの顔には感心と呆れが同時に浮かんだ。
「まあ、あいつはそんなヤツだからな」
 会話に新たな人間たちが加わってくる。今度は戦闘機のパイロットだと分かる面々が5人。いずれもアルジャーノン達の顔なじみで、彼等と同じアルビオン列島からの遠征人員である。蒼いパイロットスーツには、「剣を両足で持ち、クチバシが鋭い翼竜」をあしらった部隊マークがワッペンされていた。彼等は、カリバ
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