#06:クオレの人となり

生産しただけで、今となっては陳腐化・旧式化も甚だしい。
 女子供の虐殺で悪名高く、人間を裏切った事からハンター達の憎悪こそ買いまくっているものの、バズーカの砲弾1発で撃沈させる事も難しくなく、ハンター達からすれば火力が高いだけで対処法さえ間違わなければ、スティンガーを駆る新米ハンターでさえ倒せる相手であるという意見が支配的だった。
 少なくとも、現在のジナイーダとファシネイターは、少々火力が高いだけのザコも同然であり、簡単に倒せないようではハンター失格という認識しかされていないと、ハインラインは言うのであった。そして、その為にクオレがどれだけファシネイターを破壊したとしても、特別誉められはしないとも。
「そうなんですか……」
「そういう事です。36年前はドミナントとか言われているようですが、現在の地位は全く逆。最早MTと同レベル――いえ、MTでも機種ややり様、パイロットスキルによっては、あっさり破壊出来るほどなんですから。だからこそ、君がアレの自称ドミナントを一人で倒せたとしても、まだハンターとしては認知されていないのです」
 アルジャーノンは13歳でハンターデビューしているが、クオレ達若手ハンターから「まぐれ当たり」と専らの評価だったバズーカ射撃によって、初任務でいきなりファシネイター撃破を決めていた。
 しかしながら「ガキに何が出来る」と、20代後半から30代以上のキャリアを積んだ同業達は誰も取り合ってくれず、オペレーターに任命されたハインラインも「そのボウズの死神にはなるなよ」とハンター達から冷やかされた経験がある。
 一応、アルジャーノンも職業上はハンターなのだが、年齢が年齢だけに、まだそうだとは認めない者が多い。その中にあってクオレは違っていたのだ。
「何ですかこの元ドミナントとは思えぬ処遇……」
「技術の進歩やパイロットスキルの向上がそもそもの原因ですね」
 時代の流れとは残酷と、ハインラインは涼しい顔で言った。
「……最もドミナントという単語自体、使われなくなって久しいですがね」
 ドミナントは、ある科学者によって提唱された「先天的な因子による天才的な戦闘適応者」を意味しており、過去に存在したトップランカーやイレギュラーは皆これに該当していたという。これがドミナント仮説と呼ばれ、人間離れした神がかり的な戦闘能力の持ち主として、レイヴンに限らずACパイロット達にとっては、嘗ては畏怖・憧憬の対象となると共に、目標ともなっていた。
 だが、ドミナント仮説には科学的根拠が認められなかったうえ、今や犯罪者やテロリストも当然のレイヴンを、ひいては大量殺戮者に落ちぶれたジナイーダを肯定するニュアンスがあるとして禁忌され、廃れた。
 しかも、ジナイーダを憎むハンター達からは「あんなのはゴミナントでいい」とまで言われる有様である。その一人にクオレがいる事は論を待つまい。
「どれぐらい前の事だったんですか?」
「少なくとも私が二十歳になる頃には、全く聞かれなくなりました。バーテックス戦争の頃と比べると、凄まじい落差ですよ。こうなってしまってはドミナントもお仕舞いです」
 ハインラインはそう語った。齢35を数える彼は、バーテックス戦争の生き証人として、アルジャーノンに当時のACパイロット達に関する情報を提供する立場でもあったのだ。少なくともハインライン自身は、バーテックス戦争の事を考え、後の世代に伝える事が、自分が持つ意味であると信じている。
「その代わりとして、“スペリオール”が使われ始めたんですね」
「そうとも言えるでしょう」
 レイヴンの没
[2]前へ|[3]次へ
ページ移動[1..4 5 6 7 8 9..18]
[7]TOP [9]目次

まろやか投稿小説 Ver1.50