#06:クオレの人となり

の前にも組織的な攻撃ではないにしても、拠点を持たない機械生命体の群れが散発的に襲来してくる事があった。
「集団自体はどうなるんだ?」
「偵察衛星や有人偵察機、地元ハンター達が引き続き追跡中です。現時点では、続報を待って下さいとしか言いようがありません。一刻も早く拠点の所在が掴めれば良いのですが……」
「分かった。此処で待機する」
 本来なら偵察衛星があるなら最初からそれを使えと言いたかったが、クオレは何も言わなかった。操作系統のトラブルが発生したり、衛星追跡施設がモンスターの襲来により破壊された事でそれが出来ず、昨日になってようやく偵察衛星が操作可能になった事を、ハインラインから知らされていた為だ。それに、当のハインラインも俺と同じ気持ちだろうなと薄々感じている。
 それに、出撃しようにも整備されないようでは厳しいものがある。機体損傷に起因するトラブルで足止めを食ってしまってはたまったものではない。
「いえ、待機する前にダビッドソン少佐の所に出頭してください」
「何でだよ」
 クオレの顔に露骨な嫌悪が浮かぶ。
「作戦行動中にオフィスビル誤爆1件、団地誤射数件、自家用車10台破壊の報告があります。団地でジなんとか憎しのあまりに、レーザーキャノンやマシンガンを発砲した際に――」
「だあぁ、分かった分かったよ」
 ハインラインから逃げるように、クオレはイェーガーズチェイン・インファシティ基地司令部へと急発進した。嫌々ながらも向かっているのは明確だった。
 一人残ったハインラインはその様子を見送り、次いでハンガーに係留されたグラッジパペットを遠巻きに見詰める。目だったパーツの脱落こそないが、機体の所々が焼かれ、レーダーロッドが折られている。
「あれ? クオレさんは?」
 通話を終えたと思しきアルジャーノンが訊ねて来た。
「先の作戦行動でミスというか誤爆をやらかし、司令部に出頭しています。ダビッドソン少佐からお説教か制裁か減棒を頂くか、始末書を書かされる可能性が考えられます」
 場合によっては出撃停止処分、最悪拘束もハインラインは考えていたのだが、機械生命体の脅威の中である。流石に戦闘員1名を誤射だけで出撃停止にするとは思えなかった。
「はぁ……またですか」
 アルジャーノンは呆れた。ジナイーダ憎しのあまりに暴走する点は、彼にとって、お世辞にも誉められる点ではなかったのである。
「偏屈狂じみたあの姿勢は何とかして欲しいんですけどね……」
「ええ、全く困り者ですよ」
 ハインラインも溜息をついた。
「若手ハンター達の中では間違いなくファシナニヤラを一番撃破していますが……目立った点といえばそれ位ですから。際立った点がない以上、汚点を増やして貰いたくはないものですが……」
「ファシネイター一番撃破……って、何機撃破したんですか?」
 詳しい数字は後でハンター組織のページを確認して貰えば良いと言う前提をつけ、ハインラインが記憶領域にあるうちの数字データを搾り出した。
「確か、つい最近200機を突破したとか」
「それは凄い……」
 アルジャーノンは驚いた。
「ちょっと、その程度で驚いて貰っては困ります。ハンター達から見ればファシナニヤラは虫ケラも同然なんですよ? すぐに倒せる相手を大量に破壊した所で、これと言って意味があるとは思えません」
 ハインラインの曰く所では、ドミナントと呼ばれるその女レイヴンが機械生命体となった成れの果ては、戦闘能力的には特筆するべきでもない上、現在のACに付き物のフォースフィールドも搭載されていない、ただ36年前の姿を再現して大量
[2]前へ|[3]次へ
ページ移動[3 4 5 6 7 8..18]
[7]TOP [9]目次

まろやか投稿小説 Ver1.50