#06:クオレの人となり

。まあかく言う君も若いのだが……ダビッドソンが認めたとあっては拒否する事もあるまい。それに君も20歳だ、子供ではないだろうから戦地において、ハンターとして適切な判断は出来るだろう」
 その為、滞在延長申請や経費申請などの各種手続きを正当な手段で行ってさえくれれば、クオレが引き続き作戦に当たる事については不問にするとレイザーバックは伝えた。
「ただ、問題は……」
 レイザーバックの溜息がクオレにも聞こえた。それが愚息の事に由来しているだろうと言うのは、若きハンターの想像に難くなかった。
「クオレ君、愚息に代わってくれ。話をしたい」
「了解、少々お待ちを」
 クオレは傍らにいたアルジャーノンに携帯端末を渡した。
「クオレ、そこにいましたか」
 携帯端末を渡した直後、鞄を持ったハインラインが若きハンターの姿を認めて駆け寄ってきた。
「機械生命体は?」
「集団を4つに分割して離脱しています。北西と南西に2ずつで、うち1つはインファシティ北西50キロの森林地帯を北上中。もう1つは西南西100キロの廃墟目掛けて一直線に進んでいます。3つ目のグループはインファシティ脱出後、真っ直ぐ西へ逃走。残る1つはジュイファシティ郊外を掠めるように南下しています」
 ハインラインは持参してきた鞄からジュイファシティ周辺の地図を取り出して広げた。モノクロの地図にピンク色の丸と矢印が引かれている。ピンク色の丸は機械生命体の集団を、矢印は逃走ルートとその予想をそれぞれ示しており、識別の為にAからDまでのマークが印されている。
 ピンク色の矢印に掛かるように、赤いバッテンが記されているのにクオレは気が付いた。
「このバッテンは?」
「小規模シェルター都市や地下実験場、兵站施設の跡地など、各種地下施設所在地を示したものです。いずれも現在は閉鎖され――」
「そんなバカな事を!!」
 背後からアルジャーノンが声を荒げたので、クオレとハインラインは一瞬硬直し、すぐにハンター少年へと視線を転じた。
「インファシティを潰そうとする機械生命体を放っておけと言うんですか!?」
 アルジャーノンの口調はいつになく激しい。怒りや不満がクオレやハインラインは勿論、通りかかったチェインの職員達や部外者ハンターにも分かるほどだった。
「父さんは僕一人の為にインファシティの人がどうなっても良いと言うんですか!」
 お前一人居た所でどうなると言うんだ、学校サボって進路に問題を来たしたり、死んでからでは遅いんだと言うレイザーバックの反論がかすかに聞こえた。
 クオレとハインラインは、この親子喧嘩には介入しない方が良いと判断し、互いに視線を交わしてから話に戻った。こうした血縁者同士の争いに介入して、事態をややこしくするべきではない事は二人も分かっているからだ。
「で、この赤いバッテンは?」
「まあ、閉鎖した何かしらの施設であると思って頂ければ差し支えないでしょう。この中の何れかに機械生命体達の拠点がある、と言う事は大いに考えられます」
「確かにな」
 クオレはこれまで機械生命体討伐作戦に何度か参加していたので分かっていた事だが、彼等の巣は嘗て人類が用い、現在は閉鎖された施設の奥に作られる事が多かった。各種装置を持ち込むほか、既存の施設を補修して再稼働させ、人類への攻撃拠点として改造して自らの要塞としているのである。犯罪者やテロリスト、秘密結社等が法の目を掻い潜り、それが殆ど向けられる事の無い閉鎖区画を根城に選ぶのと同じであった。
 ちなみに、インファシティ周辺に機械生命体が出現したのは1年前の事だったが、そ
[2]前へ|[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4 5 6..18]
[7]TOP [9]目次

まろやか投稿小説 Ver1.50