#06:クオレの人となり

ラッジパペット同様、コア規格に基づき量産・販売されたパーツ類でアセンブリされたACも存在している。
 そのいずれもが、量産品や、それを個人に合わせてカスタマイズしたものであるが、その中にあって、アニメやゲーム的な専用機やワンオフ機の類は存在しない。
 単独行動が基本のレイヴンとは違い、ハンターは総じて徒党を組む事が多く、イェーガーとなると時には集団での戦いも行う。その為、彼等の兵器運用にはシステム化された行動が必要であり、個人専用機を配備する意味が希薄であるからである。
 また専用機やワンオフ機はその特性上、部品交換などが利かないなどの整備上・運用上の問題点も多い。当然その整備の為にはコストが、更には専用の設備や装置なども必要とする場合すらあるため、10000cも儲けが出ればいい所と言われるハンター達にとって、専用機は厄介な金食い虫でしかない。よってアニメ的な専用機は、イェーガーズチェイン――少なくてもインファシティ基地には存在しない。
 グラッジパペットも例外ではなく、このACはパーツの値段の高低こそあれど、全て市販品で組まれたものである。そして、不要な部分をオミットしたり、特殊な機能や武装を搭載した事もない。24時間戦争当時には存在しないインサイドミサイルが積まれてこそいるが、これとて市販品であり、値段が許せば他のパイロット達にも購入出来る。
 だからこそ、これらの兵器は帰還して早々の弾薬・燃料補給や修復、部品交換がスムーズに進んでいるのである。ポットベリーやターボクロックも同様だった。
 だが、現在は整備待ちの状態が続いている上、ターボクロックに関して言えばその頭部が失われていた。帰還途中に撤退していく機械生命体の群れにニアミス、レーザーを食らって頭部が完全破壊に追いやられたのである。
 その、取り外された頭部を前に、ジオストラは整備士から告げられた。
「これはダメだな。新しく買い直してくれ」
 分かっていた事だけど、やはり言われればショックだなとジオストラはうなだれる。
「メソメソすんな。頭部パーツなんて買えばどうにでもなるだろ」
 クオレが隣からジオストラの右肩をドンと叩いた。ジオストラもそんなクオレの励ましに気が付いてか、「そうだな」と呟くように返した。
「まあお前は頭買い直せば良いとして……俺はもう一つの問題に当らねぇと」
 収支や弾薬費の事は一時的に忘れる事にしたクオレは携帯端末を開き、電話帳の一番上にあるダイヤルに接続した。暫くの呼び出し音が続いた末、着信を知らせる電子音が鼓膜を響かせる。少し遅れ、低い中年男性の声も。クオレが常に頭を垂れる相手にして、アルジャーノンの父親である者。
 レイザーバックの声である。
「クオレ君か。何か連絡でも有るのか?」
「はい。俺はインファシティ支部のダビッドソン少佐から機械生命体討伐作戦に参加するよう要請され、滞在期間を延長する事となったのですが……」
「良い事ばかりではない、と?」
 クオレは肯定した。
「アルジャーノンが俺と一緒に戦いたいと言うのですよ」
「息子がか?」
 レイザーバックの声に抑揚が見られる。クオレには、驚いているように聞こえた。
「ええ。俺としてはまだ13歳のガキを戦列に立たせるべきではないと思うのですよ。そこで、アルジャーノンだけでも其方に送り帰そうと思っていたのですが……」
 アルジャーノンが強硬に拒否しているので、俺としては困っているのだとクオレは伝える。
「事情は分かった」
 クオレは固唾を呑んで次の言葉を待った。
「若くして死なせる気はない、それはいい判断だ
[2]前へ|[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4 5 6..18]
[7]TOP [9]目次

まろやか投稿小説 Ver1.50