#06:クオレの人となり

うなったんだか」
 そんなミラージュがよく開発や製造権を売却したなとフォーミュラーは呟く。
「他社に擦り付けてでも抹消したい程の失敗作だからでしょう」
 ハインラインはその理由も大体分かっていた。
「24時間戦争時代では、ジャウザーやグリーンホーンと言った面々が使っていたと記録があります。ですが、彼等は大した事も出来ないまま戦死を遂げている上、その後のバーテックス戦争でミラージュが本社防衛部隊に配備したはいいものの、肝心の本社部隊がエネルギーマシンガンの使いすぎでエネルギー不足に陥り、結果レイヴンにズタボロにされたのが大きいかと」
 原因が戦場をレイヴン頼みにしていた事に由来する軍の形骸化と言う所にあった、と言う点もあるが、何れにせよ本社部隊の足まで引っ張ってしまったと言う大失態があり、流石のミラージュもとんでもない失敗作ぶりを認めざるを得なかったと、ハインラインは言う。
「詳しいな、あんた」
「亡き父がミラージュ勤務でしたので。それに私自身、元はミラージュの通信仕官でした」
 聞けば、ハインラインはミラージュでもオペレーターをしていたと言う。地球政府によってミラージュの軍が解体された後は、イェーガーズチェインのエージェントに転向、後にミラージュ時代に養った的確なナビゲートや遠隔操作を高く買われ、オペレーターに転属されたのだった。
 その為、ミラージュきっての産廃であるWH10M-SILKYについて詳しいのも当然だったんだなと、フォーミュラーは納得させられたのだった。
「大した人だわ、あんたは」
「一応、13年オペレーターをやってますので」
「成る程、ベテランの域なんだな」
 俺にもこう言うオペレーターが居れば良いんだけどなと、フォーミュラーは溜息をついた。
「だけど……こう言っちゃあ何だけどさ」
「何です?」
「……何であんたはあんなのを見放そうって気にならんの? 暴言ばかりだしシミュレーターには非協力的だし、ガキみたいに駄々こねて行っちまうようなクオレを」
 フォーミュラーに言われ、ハインラインは顎に右手を置いて考えた。
「そう言えば、不思議と見放そうと言う気にならないんですよね……問題児だと言う事は頭では分かってる心算なんですが」
 クオレと共に仕事をしているうちに、ハインラインは彼の人間的欠点を幾つも目の当たりにしていた。ジナイーダへの憎悪によって、行動に品が無くなり誤射や暴言は日常茶飯事、一方で標的が女子供だと攻撃を躊躇して自分の身を危険に晒すなど、ハンターとしては問題人物である事は、ハインラインとしても疑いようの無い事実であった。
 しかしながら、ハインラインはそのクオレを見限ろうと考えた事がなかった。その理由は彼の行動を常に見ているから、と言う点に集約されていた。
「その問題児が、少女を説得したり、ハンターやイェーガー達と結構幅広い交友関係を持っているという、強烈なギャップを持ち、それが不思議な興味を抱かせているからですかね」
 更に、ハインラインにはクオレを見捨てる心算が無い決定的な理由があった。
「何より、不祥事を起こした私を信頼してくれている、と言う所が大きいかと。彼が居なかったら、私は既にイェーガーズチェインを離れていたかも知れません」
「あんたにも不祥事ってあったのか……」
 フォーミュラーは感嘆した。だが、その詳細は聞かずにおいた。正直、聞きたくなかったのである。不祥事といえば大抵女性問題や不正な金の問題、虚偽と言った点が殆どだろうと言う認識がフォーミュラーの中にあり、そんなのを聞いた所でつまらないと見なしていた
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まろやか投稿小説 Ver1.50