#06:クオレの人となり

ッジパペットの動きが急にゆるくなり、スティックを倒してもトボトボと歩行するだけになった。ブーストを吹かそうと試みるも、ブースターからは全く反応が無い。機体右側のコンソールはカラになったエネルギーゲージを表示している。
 チャージングである。
 実際のACと比べると、シミュレーターでのACのエネルギー関連は実機よりもシビアな設定である。と言うのもこれ位のハンデをつけ、なおかつエネルギーマネジメントが出来なければ、実戦で万一エネルギーが不足する事態に直面した時に対応が取れない、と言う上層部の判断に基き、このような設定がなされたのである。
 長らく実戦をこなして来たクオレが、ハンターランクBマイナスに甘んじ、レイヴン達からCマイナス相当の評価を受けていたのは、実際の戦場では確かな結果を出しているがシミュレーターではそうも行かないと言う、一種のミスマッチに起因していた。
 それがジナイーダ憎さのあまり、依頼に出向いてばかりでシミュレーター訓練をサボっていた結果である事は論を待つまい。そして今、愚かにもそれを露呈してしまったのである。
 ちなみにクオレのシミュレーターテストにおける成績はEランク。これはハンターとしては最低水準である。
「なんじゃこりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
 叫んでも時既に遅し。真面目なハンターであるフォーミュラーが手加減する訳がなく、そのままエネルギーマシンガンと地上魚雷の連続攻撃を食らいまくって「戦闘不能」判定。
「何故だ……?」
 フォーミュラーが訝る。
「アースガルズで共闘した時は、こんなドヘタクソのザコじゃなかった筈だ……」
 フォーミュラーの記憶の中では、クオレはオーバードブースト中でも的確にレーザーキャノンを当てられる砲撃戦スキルと、そのスピードやGにも負けない機体制動力を持っていた、年若くして名を売る敏腕ハンターであった。その彼が、シミュレーターとは言え、何故こうもあっけなく倒れたのか、理解に苦しんだ。
「1分も経たずして撃破されてどうするんですか。これではろくな練習になりません」
 更には監視していたハインラインからも文句が飛ぶ始末である。
「チクショー、何じゃい! やってられるか畜生俺はやめるわ!」
 幼稚な罵詈雑言を吐き散らしながら、機嫌と気分を著しく害したクオレはシミュレーターをシャットダウンし、さっさとガレージに逃げて行ってしまった。
「やれやれ、困ったものです……」
 ハインラインは溜息をついた。
「あいつ、前々からあんな感じだったのか?」
「ええ、何故かシミュレーターでは非常に弱いんですよね」
 実戦では中々の腕を見せているのに、この落差はどうしたものかと、オペレーターとハンターはそろって頭を捻った。
「ところで、そのエネルギーマシンガンですが……」
「こいつか?」
 そうですとハインラインは肯定した。
「ミラージュのエネルギーマシンガン・WH10M-SILKYをベースとしたようには思えないのですが」
「やっぱあんたもそう思うか」
 シミュレーターをシャットダウンしながらフォーミュラーが応じる。ハインラインは二人が居たシミュレーターのすぐ後ろにあるコントロール・ブースに腰掛けていたが、ザルトホックが振り返ったときには既に席を立ち、鞄を片手に歩み寄って来た。
「キサラギがミラージュの黒歴史の開発・製造・売却権を買い取って、色々と手を加えたらしいんだ。まだ販売開始から3ヶ月しか経ってない上、俺も2週間前から使い始めたから、詳しい事は分からないんだけど。それにしても、高慢さで一部じゃ悪評高いのに何でこ
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まろやか投稿小説 Ver1.50