#06:クオレの人となり

話モードに切り替え、集音部へと声を飛ばした。
「二人とも、準備は出来ましたでしょうか?」
「いつでもいいぜ」
 フォーミュラーは問題なさそうに返答すると、指を鳴らしてスティックを握った。
「こっちも良い」
 本当はイヤだけどなとクオレは毒づいた。彼の目の前で、フォーミュラーの搭乗機・ザルトホックXVが、遥か前方に待機している。その機体名が、フォーミュラーの遠い先祖であるレイヴンが名乗っていた名前から取り、彼の一族が代々襲名し続け、フォーミュラーの機体で15代目になると、クオレは聞いていた。
 ズームして見るその姿は鮮やかなオレンジとスチールブルーのツートンで、CHD-SKYEYE、CR-C89E時代から長らく一線で用いられて来たCCM-0V-AXE、現行最軽量腕部CAL-44-EAS、積載こそやや劣るも他は優秀な中量2脚MLM-MM/ORDERでフレームを構成。武器は背部の小型ロケットCWR-S50と地上魚雷CWM-GM14-1、レーザーブレードCLB-LS-2551と、以前共闘した時に見たものと変わりはない。
 以前共闘した時は、迎撃装置MWEM-A/50を搭載していたが、今回は軽量化のためだろうか、エクステンションは装着していなかった。
 そして、右腕にはレーザーライフルを携えている……はずが、見慣れない銃を携えていた事に、クオレは気がついた。
「おい、何だその銃は?」
「こいつか?」
 クオレは頷いた。
「KWG-MGEH/SILK。24時間戦争時代きっての産廃・エネルギーマシンガンWH10M-SILKY、俗称シルキーの復刻版……ってとこだな。開発・販売元はミラージュからキサラギに移っちまってるけど」
 エネルギーマシンガンの銃口がグラッジパペットに向けられる。
「じゃ、早速やらせて貰う」
 悪いなとフォーミュラーが笑うと同時に、エネルギーマシンガンから光弾が迸った。だがそれはWH10M-SILKYから放たれる緑色の貧弱な弾ではなく、プラチナシルバーの輝きを放つ雪球を思わせるエネルギー弾だった。そしてクオレは回避しきれずに被弾した。
 いや、回避はした心算だったが、予想以上にエネルギーマシンガンの弾速が早かった。回避行動に移った時には、既にグラッジパペットの右大腿のアーマーが吹っ飛ばされ、左腕のMWG-MG/800が破壊されていた。
「ゲッ、何だよコレは!?」
「シルキーの開発者に代わって言う。もう産廃とは言わせない」
 フォーミュラーの宣言と共にザルトホックXVが飛び上がり、頭上からエネルギーマシンガンを更に連射しかかった。恐ろしいまでの悪燃費であった旧型番時代には考えられなかった事である。しかも、ザルトホックXVにはエネルギー回復装置の類は搭載されていない。旧型番時代を知る者が見たなら信じがたい事であっただろうが、勿論放火に晒されるクオレには、悠長に観察している余裕など無かった。
 クオレは即座にオーバードブーストで逃げに転じる。弾速と威力を味わった今なら、回避行動に移るのはスムーズだった。だが、それでも完全には逃れ切れず、ボディの随所を焼かれた。
 こうなればオーバードブーストを起動して一気に強襲し、こちらもマシンガン連射やレーザーキャノンで短期間のうちにカタをつけるべきだとクオレは見た。そして頭上から地上魚雷を投下、4分裂した弾頭でグラッジパペットXVを襲うザルトホックの足元目掛け、再度起動したオーバードブーストで潜る。
 このまま急旋回して反撃に移る――そう思った刹那、オーバードブーストが停止した。
「なっ!?」
 更にグラ
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まろやか投稿小説 Ver1.50