#06:クオレの人となり

が、彼がシミュレーターでの訓練を受けた回数は数える位しかなかったですね。依頼だのなんだのを理由にサボってましたから」
「オイ、何悪質なデマ流してんだよ!」
「事実と言ってもらいたいものですね。大体クオレ、もう4ヶ月近くシミュレーターでの訓練サボっていたではないですか」
 イェーガーや、イェーガーズチェイン登録ハンター達には、定期的にシミュレーターでの訓練を受ける事が義務付けられている。これはハンター達の戦闘能力評価と戦闘感覚の低下を抑止する為に行われてきたのだが、クオレはその訓練を、依頼という面目でサボり続けていたのである。
 とは言え、それが問題になった事はない。と言うのもクオレは、常にジナイーダ憎しで彼女を叩き潰して回っているなど、依頼に出向いて戦果を挙げている為、上層部も担当オペレーターも、大目に見てくれていたのである。他のハンターにしても、似たような状況であればシミュレーター訓練は免除されている場合が多い。
 しかし、ハインラインはシミュレータ訓練を受けて来いと促していた。
「対等の条件下ですから、君の技能評価には良いとは思うのですがね」
「チッ……」
 しょうがないと舌打ちし、クオレは渋々ながら腰を上げた。
「シミュレーター嫌いなんだよ……」


 イェーガーズチェインの拠点内では、必ず操縦用のシミュレーターが設置されている。これはハンターやイェーガーの戦力であるACを始め、スティンガー、タイタス、その他の機動兵器のコックピットを模した構造になっており、実機同様の操縦で戦闘訓練や演習、技能評価を受ける事が出来るようになっている。
 時にはシミュレーター同士を複数リンクさせ、複数人数による戦闘演習も行う事も可能だが、ハインラインはAC用のシミュレーターを2基起動させ、二人からIDカードを受け取り、シミュレーターのカードリーダーに通す。
 IDカードには、搭乗機のデータを記されたマイクロチップがあり、リーダーが読み込むとシミュレーター内でそのアセンブリを再現される。クオレにIDが返却される頃には、彼の目の前ではグラッジパペットそのままのデータが表示されていた。左右合計1800発の弾丸を携行するマシンガン、軽量のレーザーキャノンやインサイドミサイル、エクステンションの迎撃装置など、そのどれもがクオレの慣れ親しんだものを再現されている。
 しかし、それでもクオレは違和感を拭えない。シミュレーターと実戦とでは違うのは勿論理由としてあるのだが、それは彼にとっては別の意味を示しているからだ。
「なぁ、本当にやるのか?」
「たまにはやりましょう」
 出来る事ならシミュレーターを放棄して逃げたい所だったが、やはりハインラインがそれを妨害していた。違和感と不満を抱えながら、クオレは諦めて渋々ながらスティックを握った。モニター上に、実機のデータを元にして模倣されたグラッジパペットの各種情報が表示される。動かした所では、実機と寸分違わない。
 続いて、クオレのモニターにブルズアイが表示される。ロックオン及び射撃反応テストである。すぐさまサイト内に収め、ボタンを押し込む。全て正常だった。
<COMPLETED>
 異常なしを知らせる文字列と共にブルズアイは消えた。
 次の瞬間、グリッドのみで表示される世界が、擬似構築された演習場へと世界が切り替わった。システムがシミュレーションを開始したのだ。ハインラインはシミュレーター近くのコントロール・ブースへと移り、コンソールを操作し、各種情報の確認作業に移る。
 全て異常なしと認めると、ハインラインはコンソールを通
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まろやか投稿小説 Ver1.50