#06:クオレの人となり

なく全て機能停止し、それ以後再び動き出さない状態が続いています……また、ECMを散布され、その隙に逃げられたという報告も入っています」
「その位置は?」
 近場に居合わせ、説明を聞いていたフォーミュラーが訊ねた。
「インファシティから西に80キロの森林地帯です。丁度この周辺で、全ての敵機が停止しました」
 ハインラインが昨日の地図を開いて説明する。ピンクの矢印と赤いバッテンの他、新たに蛍光緑で丸く塗りつぶされている場所が2箇所あった。うち1つはハインラインが説明した森林地帯だが、その南にも蛍光緑で塗りつぶされている区画があった。
 更に、付近には赤いバッテンも見られる。
「この緑は何だ?」
「ECMを使用され、敵機が行方をくらませた地域です。そのすぐ近くの赤い×印は閉鎖された複合地下都市です。名前はタルタロス」
 周辺でECMを使用され、なおかつ機械生命体が行方をくらませたのが付近である事から、上層部はここが拠点との推測を出していると、ハインラインは説明した。
「ダビッドソン少佐達は、先程、カリバーン隊を含む戦闘機編隊をこの付近に派遣。タルタロスの偵察・調査を実施。対して機械生命体側は、空中用機動兵器や飛行型MTを差し向けて来ました」
 その直後、甲高いエンジン音を響かせて、滑走路から戦闘機が飛び出して行った。その中には、良く見るワスプの他に、セイレーンと呼ばれるスリー・サーフィス形態のアニメ的な流麗さを持つ機体も含まれていた。先行した部隊の援護に向かうのだろう。
「機械生命体が出て来たって事は、近くに拠点があると言う事は大いに考えられるな」
 フォーミュラーが納得したように頷いた。
「仰るとおりです。まだ具体的な位置が確定した訳ではないのですが、タルタロスか、その周辺に拠点がある可能性が高いと見てよいでしょう」
「でも、機体は整備中。発進出来るような状況じゃねぇからな……」
 クオレは溜息をついた。イェーガーズチェイン上層部では機械生命体の拠点探しと、判明した後の討伐作戦実施に向け、様々な調整や交渉が続けられているが、中堅以下のイェーガーやハンター達は周辺警備と侵入して来たモンスターや機械生命体の排除ぐらいしかやる事がなかったのである。
 しかも、まだ愛機を整備して貰えずにいたクオレはそれすら適わず、同じく昨日の戦いで機体を損傷し、やはり出撃出来ずにいるフォーミュラーは半分ダレかかっていた。
「だらしないですよ」
 アルジャーノンは戦うニートも同然の20代男子2名の近くで、教科書片手にプリントへと向かい合っていた。このプリントは学校の課題として出されたもので、アルジャーノンがクオレについていく意志を父親のレイザーバックに伝えた所、授業の補填として大量にプリントをよこしたのである。
 そうだった、アルジャーノンはまだ学生だったんだなと思い出し、急いでクオレとフォーミュラーは姿勢を正した。しかし、やる事が何もないと段々ダレて来るのも事実であった。
 だがフォーミュラーは、ダレる前にダレる事の出来ないような境遇に、自分を放り込んでしまえと思いついた。
「ちょっとシミュレーターで練習して来る。クオレ、付き合え」
「何でだよ」
 クオレは露骨に嫌な顔をした。
「たまにはシミュレーターぐらいしたらどうだ?」
「してるわい!」
「ウソ付け、お前」
 フォーミュラーが更に問い詰めてくる。
「俺が知る限りじゃ、お前、ただの1度もシミュレーターやってなかったじゃねぇか」
「確かに」
 ハインラインが現れて会話に加わって来た。
「クオレと組んで2年になります
[2]前へ|[3]次へ
ページ移動[1..11 12 13 14 15 16..18]
[7]TOP [9]目次

まろやか投稿小説 Ver1.50