#06:クオレの人となり

「そのせいでダビッドソン少佐がブチ切れたのかもな」
「今度はどんなミスをやらかしたんだ?」
 事情を知らないハンター達が何やらクオレの事を零しているのが、アルジャーノンとフォーミュラーにも分かった。
「クオレさん、相当悪く言われているみたいですけど……」
「しょうがねぇよ、あいつが悪い」
 フォーミュラーはあっさりとしていた。
 彼自身、今回のクオレの行動について無関心と言う訳ではない。同じくハンターであった父親直伝の戦闘能力は目を引くものであり、フォーミュラーではとても扱えない高出力オーバードブーストも巧みに扱い、レーザーブレードによる白兵戦にも相当強い所を見せている。戦闘能力だけで見るなら、正規イェーガーと同等以上じゃないのかと、フォーミュラーは見ている。
 しかし彼は、同時に、戦場でのクオレはジナイーダへの憎悪に取り付かれている、機体名どおりの「憎悪に操られる人形」でしかない事も知っている。共闘した時でさえ、ファシネイターが出現したと聞くや、担当区域を離れてそっちに向かう等と言い出した事を覚えている。
 これではハンターランクがBマイナス、SからDで区分けされるハンターランク全体から見れば中の下なのも頷ける事であった。
 同業者達の囁きは決して嘘やあてつけの類ではなかった。クオレは、素行不良でこそないものの、ハンター全体から見れば問題児に分類される男だったのである。
 それにも関わらずハンターとしてやって行けているのは、ジナイーダさえいなければ、標的を確実に仕留め、民間人への誤射を良しとしないと言う、いわゆる「ごく普通のハンターでしかない」所に集約されていたからである。もちろん、実戦における技術について、特筆点こそ無いものの、言うほど悪い点もないという所も大きい。
 しかし、ハンターとしてはその程度なのである。平素の人格が明朗快活で人当たりの良い男であるために、フォーミュラーはクオレと言う問題児を友として見なしていたに過ぎず、それがないならクオレは、現金で即物的な物事に奔る傾向があるフォーミュラーに、あっさり見捨てられていて当然の人間だったのである。
「でも、そのクオレさんをどうして見捨てないんですか?」
「見捨てる?」
 フォーミュラーは意外だなとでも言いたげな顔をした。
「それをして敵に回したくは無いからな。それよか、ウジャウジャ湧き出すモンスターやデヴァステイターが相手なんだから、味方はやっぱり1人でも多い方がいいぜ」
 人類の敵のおかげで、クオレは見捨てられずに済んでいたようである。


 結局クオレは帰還してからと言うもの、経費申請やグラッジパペットの整備等に関係するゴタゴタによって丸一日振り回される羽目になった。幾つもの書類を出して経費申請も無事に終え、彼はやっとこさ落ち着きを取り戻した。
 彼はインファシティ支部内の来客用宿舎に寝泊りし、食事は職員用食堂でとった。これもダビッドソン少佐からの寛大な計らいによるもので、クオレに限らず、アルジャーノンやジオストラ、アニマドやフォーミュラー等、他所からのハンター達も同様の生活を送っていた。因みに今回、クオレとアルジャーノン、ジオストラの3人は同じ部屋に寝泊りしている。
 翌日、アルジャーノン宛にレイザーバックのトランクが届き、ハインラインはガレージでクオレに続報を知らせていた。内容は、昨日インファシティから脱出した機械生命体軍団の行方と、彼等の拠点に関する情報だった。
「結局拠点が分からなかったって!?」
 クオレはものが言えずに立ち尽くした。
「はい。追跡中だった敵機が例外
[2]前へ|[3]次へ
ページ移動[1..10 11 12 13 14 15..18]
[7]TOP [9]目次

まろやか投稿小説 Ver1.50