#05:人類の敵

ウェイの支柱を破壊した。支えをなくしたハイウェイは重さに耐えられず崩落、交通渋滞中だった自動車とそのドライバー及び同乗者諸共砕け散った。
 更に、陥没部分から別のファシネイターがハイウェイに乗り上げ、一般車両を次々に踏み潰し始めた。踏み潰されなかった車はパルスキャノンとマシンガンで破壊されたか、LH09-COUGAR2の側面や押し出された他の車に当って跳ね飛ばされ、落下した。
「待て、このクソ!」
 グラッジパペットはすぐに追撃を開始する。ターボクロックとポットベリーも追うが、両者とも重装備が災いし、距離を離されて行く。
 ファシネイターの後ろでは地獄絵図しか展開されていなかった。吹き飛んだ車、踏み潰された車、炎上する車、助けを求めて呻く瀕死の人々、そして踏み潰された血肉と骨の塊が累々と連なっている。ラッシュアワーに伴う交通渋滞が一瞬にして惨状と化して行く。考えたくはないが、千のケタに達する人命が軽く失われただろうとクオレは思った。
 だがクオレや力なき市民を嘲笑うかのように、ファシネイターは子供達を満載したバスを発見した。恐らくは遠足か何かからの帰りだったのかも知れないが、バスの中は恐慌状態となった。
 運転手はあわててハンドルを切ったが、ファシネイターはそのバスを蹴る様に踏みつけた。バスは一瞬にして木っ端微塵となり、子供達の死体を路上に散らす。
「やめろぉぉぉぉぉぉッ!!」
 クオレが叫び、グラッジパペットがマシンガンを撃ち捲くる中、ファシネイターは病院を見つけ、既に銃撃によって機体各所が損壊させられていたにも構わず突撃した。病棟をレールガンやマシンガン、パルスキャノンで銃撃し、爆炎と破片と黒煙を派手に吹き上げる。患者の扱いもまるで容赦がない。その姿を見かけるや、病室から吹き飛ばし、マシンガンを撃ちまくる。
 小児科病棟から脱出して来た母親と子供たちが、大慌てでバンに乗り込む。他の親族や医者、患者なども、当るが幸いとばかりに車で脱出を図る。しかしファシネイターは見逃さなかった。まず母親と子供たちの乗ったバンを無慈悲に踏み潰し、他の車を片っ端からマシンガンで銃撃し、ミサイルで吹き飛ばした。火炎に包まれた救急車だけは脱出出来たものの、向かいの建物に正面から激突した。
「畜生ッ、好き放題やりやがって!!」
 クオレは周辺エリアに被害が及ぶ事を懸念し、一瞬発砲を躊躇してしまっていたが、しかし病院に手を出されたに及び、レーザーキャノンで反撃に出た。
 最初の砲撃は外したが、第二射はフォースフィールドのないファシネイターを斜めに貫いた。この一撃でジェネレーターは破壊されただろうが、しかしジナイーダはまだ、機体を震わせて殺戮の快楽を味わおうと、マシンガンを掲げていた。
 グラッジパペットは更にマシンガンを繰り出し、ファシネイターを蜂の巣に仕立ててジナイーダに引導を渡した。
 しかし、その彼の目の前で、また別のファシネイターが遠くで破壊に耽っていた。すぐさま追撃に向かう。
 このファシネイターは住宅街で無差別殺戮を展開していた。特に子供の姿を見かけるや、ファシネイターはそれを片っ端から殺して行く。母と姉、妹が死んだ時と同じだと、クオレは忌まわしい記憶を呼び起こしていた。
 直後、先程目の前で殺された妊婦と姉妹、バスの子供達、病院患者、その他大勢の市民達の様子が立て続けにフラッシュバックする。先程の光景を目の当たりにしての不快感や嫌悪感が、己が内で核融合反応を引き起こしたかのように、我が身を焦がさんばかりの赤熱と激怒へと変化していくのを感じた。噛み合わさ
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まろやか投稿小説 Ver1.50